2017年03月28日

【回想録】ピッピトナル

中島みゆきさんのアルバム「親愛なる者へ」の中に「ダイヤル117」という歌がある。同アルバムは大好きで、高校時代から今まで、おそらく数百回聞いてきたと思うが、この曲は正直、それほど好みではない。
歳をとればわかるようになるかとも思っていたが、これはやはり女の情念の曲なのであろうか。今改めて聴き直してみても、なんとも寂しい曲だなぁ、と、心が沈んでしまう。



中島みゆきさんは大好きなシンガーソングライターなので、これはそのうち、別に記事にするとして――。

今の若い人には、この「ダイヤル117」がなんだかわからない、という方もいらっしゃるのではないだろうか。
これはまだ携帯がなかった頃、イエデン全盛期に、「時報」を聞くための番号だったである。ただひたすら24時間、「午後○時○分ちょうどをお知らせします。ピッピッピッポーン」と流し続けているNTT(含電電公社時代)のサービスだったのだ。そして、今でもやっている(電話の3桁番号サービス)。

言うまでもないが、昔は電波時計などというものはなく、Network Time Protocolもなかった。ユーザが自分で設定しなくても携帯基地局が端末に正確な時間を自動的にセットしてくれるようになったのは、ここ十年くらいのことである。

そんな時代、人は時計を合わせるのにテレビやラジオの時報を使うしかなかったわけだが、毎正時まで待てないときは、10円払って117に電話をかけ、時計合わせをしていたのである。

中島みゆきさんの「ダイヤル177」は、夜に、人恋しさのあまり、この時報をずっと聞き続ける、という女の歌なのであった。背景がわかると寂しいでしょう?

同じようなNTTのサービスには「天気予報」もある。こちらは番号177。
117と177、ちょっと混同しそうだが、電話マニアはこう覚えていた。

117は「ピッピと鳴る」で時報。
177は「天気になれなれ」で天気予報。


これであなたも今日から、時報と天気予報を間違えずに聞き放題だ。
いやこれ、ちゃんと普通に電話料金かかりますから。放題じゃない。注意注意。

イエデンにはトーン回線とパルス回線という種別がある。電話をかけるときにピポパと鳴らすのがトーン回線。ジジジジジと鳴らすのがパルス回線だ。昔はトーン回線だと毎月料金をとられたが、今はトーンとパルス、同じ基本料金のはずである。ただし、パルスからトーンに変更するときは工事料が取られる。

もっとも、今どきパルス回線を使っているのは、昔から同じ番号を使い続けている家庭くらいしかないかもしれない。

このパルス回線は、111で電話局につながった。なぜ111なのか、おわかりいただけるだろうか? これは、電柱に登って工事しているNTTの人が、回線をパパパと三連続で接触させて局とつなげ、回線試験をするためだったのである。

パルス回線のジジジジは、実は受話器フックの回数である。ダイヤルを回さずとも、フックをタイミングよくタ、タ、タタタタタタタ、とやれば117につながる。
まだ黒電話の頃。ハタキで電話のホコリを取っていたら、受話器がタイミング良く揺れて111を打ってしまったらしく、折り返し電話局から電話がきてびっくりしたことがあった。

「電話局です。なにかありましたか?」
「いえ、電話機を掃除していたら、そちらからかかってきて――」
「わかりました(ガチャ)」

びっくりしたが、電電公社時代の対応なんて、こんなものだった(笑)。

深夜に人寂しくて117にかけたことはないが、執筆のひと休みに「伝言ダイヤル」のオープンボックス≠聞いたりして、ホッと一息したことを思い出す。「伝言ダイヤル」がまだ出会い系の走り≠ニなる前の、平和な時代の話である。

自分史の中では、電話が一番(技術的に)面白かった頃だ。
今の光回線を使ったIP電話は、PCから着呼履歴は出せるし番号も数本持てて便利だが、当時のように「この回線がダイレクトに相手につながっている!」というようなワクワクする興味はわいてこない。

CDの登場によってオーディオ趣味をやめた話は以前書いたが、電話網への興味もデジタル化によって関心が失せたようである。
アナログ時代を懐かしむ気持ちは残っているが、かといって、いまさら後戻りをしたいとも思わない。
そのあたりもオーディオと同じくドライではある。

と、ここで抜き打ちクーイズ!

Q:天気予報は何番だ?
Q:時報は何番だ?


ふっふっふー。復習は大事。
あなたの短期記憶が長期記憶となって、あなたの脳の記憶容量が数バイト、無駄知識で埋まりますように。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録