2017年04月03日

【日記】ウイルスではなく

最近は夏よりも冬の夜の方が改造バイクの爆音が聞こえてくるような気がするが、それは単に冬の深夜は空気が澄んでいて、遠くからの音波も届くからだろうか。なんにしろ、この寒い時期にエンジンを「ブオンブオン」空ぶかししている珍走団はご苦労様なことである。

昭和の時代は珍走団こと暴走族は普通にそこかしこにわいていた。夜、国道を走っていると、珍走団の群れが後ろからやってきて、巻き込まれたら嫌だなあと思ってクルマを左に寄せると、赤信号を無視して善良な車両を蹴散らしつつ、うるさいエンジン音をふかしながら去っていくのであった。

夏休みの夜、MZ-80Bでプログラミングしていると、遠くからバルンバルンバルバルと爆音を響かせてやってきて、近所を何十台もの改造バイクが通り過ぎていくのも、当時をしのぶ、懐かしい思い出である。

うちの高校は進学校だったが、やはり勉強についていけない生徒がいて、彼は自慢げに「ゾクの集会に参加したぜ」とうそぶくのであった。それがなにかのステータスになると思っていたのだろうか。彼は留年したあと、退学していった。元気にしていればよいが。

いやべつに、珍走団の思い出話をしたいのではないのである。なにしろわたしは、そういうクラスタとは無縁の生活を送ってきたのだから。

珍走珍走書いてきたが、もちろん、昔はそんな言われ方はしなかった。「暴走族」である。
インターネット黎明期の頃であろうか、これを「珍走団」と言い換えようぜ、という流れがあり、わたしも「それはいい呼称だ」と思い、今もこうして、言い換えをしているわけだ。
「珍走団」という呼称が根付いたかどうかはわからないが、まあその前に「珍走団」そのものがもう絶滅寸前という話も聞く。

絶滅の原因のひとつに「珍走団」という言い換え運動があったかもしれないと思うと、ちょっと愉快な気分になる。

さて、本題はタイトルにもある「ウイルス」だ。人体に病を引き起こす本物のウイルスではなく、コンピュータウイルスの方。

わたしがコンピュータウイルスの存在を知ったのは、まだX68000無印を使っていた頃だ。
当時は常時接続などというものは研究機関関係者でもなければ夢のまた夢だったので、ウイルス自体は驚異ではなかった。海の向こうではこんなものが流行っているのだなあ、と、レポートを読みながら興味深く思っていた。
当時のコンピュータウイルスやインターネットワームはUNIXシステムに潜り込むものだった。
その頃レポートで読んだ、UNIXシステムが持っているコンパイラを利用し自分でソースをコンパイルして実行ファイルを作成、さらに別のシステムへ自己を複製し増殖していくというインターネットワームの仕組みが実に興味深かったので、それを参考に、X68000のGCC真里子版を使っているユーザならば似たような状況が楽しめる「自己複製プログラム」を作成したことがある。それはディスクマガジン「電脳倶楽部」にも掲載された。

実際、インターネットワームやコンピュータウイルスを作るなど、手練れのプログラマなら簡単なことだ。誰でも、片手間でできる程度のこと。
包丁を持つ料理人だって、それで人を刺すのは容易いが、そんなことはしないだろう。それと同じである。

ところが最近は、ウイルス作成で警察に捕まった中学生や高校生が(その内容はスクリプトキディレベルであっても)、「自分の実力をひけらかすためにウイルスを作成した」と言ったりするらしい。
なんとも、そういう話を聞くと、大きなため息をついてしまう。
そして実際、「そんな若いのに凄い」「将来、スゴ腕のハッカーになるのでは」「警察は捕まえるのではなく雇うべき」などというような声もネットで散見したりする。

繰り返し書くが、手練れのプログラマにとって、インターネットワームやコンピュータウイルスをつくることなどは、朝飯前の仕事なのである。
バイクを運転する者だって、その気になれば赤信号で十字路に突っ込み、横断歩道を渡っている人に怪我をさせることができる。
ただ、常識があるからやらないだけだ。

コンピュータウイルスの作成というのは、その程度のものなのだ。むしろ作成したことをドヤ顔で自慢する方が恥ずかしい、という常識を、世間に根付かせることはできないものだろうか。

そこで、最初の「珍走団」である。同じような言い換えをコンピュータウイルスでもできないものだろうか。
「コンピュータウイルス」という、いかにもカッコよさそうな(とはわたしは思わないのだが)名称ではなく、たとえば「ウジ虫ソフト」とか呼んだらどうだろう。作成者は「便所バエ」。「コンピュータウイルスに感染した」ではなく「便所バエに卵を産みつけられた」と表現の言い換えをするのである。

「ワクチンソフト」も、そんなご大層な名称ではなく「ハエ取り紙」と呼び換えをすればいい。

いかがだろうか、このアイデア。上記の呼び方が一番だとは思わないが、コンピュータウイルス作成を「カッコいい」と思うような子どもを減らせるのではないだろうか。

これから先、小学生にプログラミング教育をするという話があるらしいが、こういったことも教えるべきだと思う。ウジ虫ソフト作成などというものは、家庭科で「包丁を振り回しちゃいけません」レベルの話なのだということを。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記