2017年05月01日

【日記】アヴェ・マリアを



おそらく、こんな一発ギャグが通用するのは、安部政権のうちだけだから(笑)。
というわけで、右も左も関係なく、今日も今日とて宗教のお話である。五月は「聖母月」なので、こんな話から。

カトリックには、伝統的に「Ave Maria」の祈りがある。ラテン語だとこんな感じ。

Ave Maria, gratia plena, Dominus tecum, benedicta tu in mulieribus, et benedictus fructus ventris tui Jesus.
Sancta Maria mater Dei, ora pro nobis peccatoribus, nunc, et in hora mortis nostrae.
Amen.


この祈りと「主の祈り」くらいは、ラテン語で唱えられるのがガチカトである。
よく、クラシックで「アヴェ・マリア」を冠した曲があるが、実はそれ、この祈りに曲をつけたものなのである。
この祈りは、主にロザリオを使うときに唱えられるので、カトリック信徒にとってみると「主の祈り」よりも唱える回数ははるかに多く、身近な祈りでもある。

日本のカトリック教会では、長らくこの祈りを「天使祝詞」として祈ってきた。
これである。

「天使祝詞」
めでたし 聖寵充ち満てるマリア、主御身とともにまします。
御身は女のうちにて祝せられ、御胎内の御子イエズスも祝せられたもう。
天主の御母聖マリア、罪人なるわれらのために、今も臨終のときも祈り給え。
アーメン。


古い信徒はこれを唱えられる。わたしはこの世代ではないのであった。
日本のカトリック司教団は1993年にこの祈りを口語訳にしたものに改めた。「聖母マリアへの祈り」である。

「聖母マリアへの祈り」
恵みあふれる聖マリア、主はあなたとともにおられます。
主はあなたを選び、祝福し、あなたの子イエスも祝福されました。
神の母聖マリア、罪深いわたしたちのために、今も、死を迎える時も祈ってください。
アーメン。


わたしはこれを覚えた世代。寝しなにロザリオを繰っていると、寝ぼけて、現在の「アヴェ・マリアの祈り」と真ん中らへんが混同してしまうことも。

そう、現在、上記の「聖母マリアへの祈り」は改訂されて、「アヴェ・マリアの祈り」となって、また新しくなっているのである。
2010年12月8日に「アヴェ・マリアの祈り(試用版)」案が日本カトリック協議会から出され、2011年6月14日に確定したものが公表された。これだ。

「アヴェ・マリアの祈り」
アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、主はあなたとともにおられます。
あなたは女のうちで祝福され、ご胎内の御子イエスも祝福されています。
神の母聖マリア、わたしたち罪びとのために、今も、死を迎える時も、お祈りください。アーメン。


ちなみに試用版のときは「わたしたち罪びとのために」が「罪深いわたしたちのために」。最後の「お祈りください」は「祈ってください」だった。つまり、後半は以前の「聖母マリアへの祈り」とまったく同じだったのである。
この祈りは、教会などで唱えるとき、一、二段目を先唱者が、三段目以降を会衆が唱えるパターンなので、おそらく、先唱者の部分だけを変更し、会衆の部分は手をつけずにおきたいという思惑があったのだろうと思われる。
が、結局は、「変えるならきちんと」という声が出て、今の「アヴェ・マリアの祈り」の形になったのではないか、と想像する。

「天使祝詞」、「聖母マリアへの祈り」の冒頭部分「めでたし」や「恵みあふれる」が、いきなりラテン語の「アヴェ・マリア」に変わったのは、実は、臨終や通夜の席でロザリオを唱えにくいという理由からであった。
「アヴェ・マリア」という言葉はキリスト教以外においてもすでに広く定着しているからOK、というのがカト評議会の解説だが、んー、ちと苦しいのではないの? とは正直なところ。

新しく変更が加えられた「あなたは女のうちで祝福され」の部分が、女性蔑視的でちょっとショック、という信徒の声も聞いた。まあそれはあるかも。
とはいえここは原文ラテン語に忠実に戻したもので、「天使祝詞」もそうなっているのだが「聖母マリアへの祈り」はウーマンリブ(古いか)の時代背景でもあって、当時、「女うんぬん」の部分を抜かしたのだろうか。

この手のものは、「ラテン語に忠実に翻訳し云々」を言い出すと切りがないのではないかとも思われる。

まとめるとこうなる。

・Ver1.0「天使祝詞」
・Ver2.0「聖母マリアへの祈り」
・Ver3.0「アヴェ・マリアの祈り(試用版)」
・Ver3.1「アヴェ・マリアの祈り」

なんかそのうち、「アヴェ・マリアの祈り95」とか「アヴェ・マリアの祈りXP」とかが出そうな勢いである。XPは「キーロー」と読んでキリストを表すこともあるので、司祭団もカト協議会も、ぜひとも今の訳で満足せず、XPまでバージョンアップしていただきたい(笑)。

正直、わたしは「天使祝詞」「聖母マリアへの祈り」「アヴェ・マリアの祈り」の三翻訳のうちならば、「聖母マリアへの祈り」が好きだ。「恵みあふれる」という祈り出しの言葉のインパクトがいい。

前述で、寝しなに寝ぼけつつロザリオを唱えていると混同してくる、と書いた。こんな感じである。

「アヴェ・マリアの祈り(結城混同版)」
恵みあふれる聖マリア、主はあなたとともにおられます。
あなたは女のうちで祝福され、ご胎内の御子イエスも祝福されています。
神の母聖マリア、わたしたち罪びとのために、今も、死を迎える時も、お祈りください。アーメン。


書いてみると結構いいカモ!? とりあえずこれを「アヴェ・マリアの祈りOSR2」と呼ぼう。OSR2は「Ore no Shiteki na pRay」の略。2はどこからきたんだよ(笑)。
とりあえず、これで2ギガ以上の祈りも大丈夫である。

閑話休題。
こうやって、基本的な祈りでさえ、カトリックはアグレッシブにバージョンアップしていく、ということに、わたしは驚きと誇りを持っている。
今なお、十数世紀前にサンスクリット語から漢語に翻訳した「経」を使い続けている日本の仏教界と比べて、いかがであろうか?
「般若心経」を現代語訳にした本を読んだことがあるが、良い内容だった。あれをポクポクと法事で唱えられる形にしようという僧侶がいない、という現実が、日本の仏教界の姿勢を示しているとも思う。

「カトリック」は「普遍的」という意味である。「普遍的」とは、決して過去に執着することではない、時代に寄り添い、時代とともに変革していくことだ、ということに気づかされる。

ふざけて書いたが、本当にそのうち、「アヴェ・マリアの祈りVer4」が出てきてもおかしくないのがカトリックなのである。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記