2017年06月02日

【日記】社長の条件

世の中いろいろな社長がいるもので、「従業員なら自分のツイッターを読むのは当然」とのたまう社長さんから「SNSは自分の世界だから好きなことをやるまで」と女装姿をアップする社長さんまで多種多様である。
なんとも、どちらも極端だとは思わなくもないが、わたしも一応、超々零細企業の社長なのでそのあたり一言つぶやくと「社長名でSNSなど絶対にやるべきではない」である。これは以前にも書いたことだが。

SNSというのはコミュニケーションの場である。ただ一方的に意見を言いっぱなしにできる場ではない。そういうことがしたかったらコメント欄を閉じたブログにすればよいのだ。
(ところで、ツイッターは本来SNSではないはずだが、ここ日本ではそういう使われ方をしている以上、SNSに含めるのがコモン・センスだと思う)

社長というのはチェスでいうキングみたいなものである。キング、イコール、プレイヤーの化身、つまり取られたらお終いなのである。それがホイホイとポーンの前に出て行って自ら闘うなどというのは愚の骨頂。せっかく会社というキャスリングした城で守られているのだから、闘いは部下に任せておけば良い。

ダビデ王は兵士に言った。「わたしもお前たちと共に出陣する。」
兵士は言った。「出陣なさってはいけません。我々が逃げ出したとしても彼らは気にも留めないでしょうし、我々の半数が戦死しても気にも留めないでしょう。しかしあなたは我々の一万人にも等しい方です。今は町にとどまり、町から我々を助けてくださる方がよいのです。」(サムエル記下 18:2-3)


と、聖書にも書いてある通りである。

もちろん、社長が役職を離れて、一人の個人としてSNSを楽しむのはありだと思う。
ネットというのは、実社会の権威が通用しない世界である。書いたもの、アップしたものだけで評価される、それが良いのだ。パソコン通信時代から、実社会の権威をネットに持ち込もうとして学生に軽く論破されるみっともないオトナたちを何人も見てきたからこそ言える。ネットは人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず、である。

と、だいぶ前置きが長くなってしまったが、タイトルの「社長の条件」とは、別に精神論的な話ではない。法的にあまり知られていない社長の条件というものを語ろうかという次第。

常識的に知っている人には当然のことだが、「社長」というのは会社法にはなんら規定のない名称である。法的に会社の代表となるのは「代表取締役」(あるいは「代表社員」)。なので、社内的にはなんの権限もない「ヒラ社長」というのもあるし、ネコだってイヌだって「社長」にできる。

ニュースで「中学生社長誕生」などの話題がたまに流れることがあるが、これが小学生でも幼稚園生でも、社長にはなれるのである。ただ、名乗るだけであるから。

では、実際に「代表取締役」(あるいは「代表社員」)として会社の権限を握る役職につける条件は法的にどうなのかというと――実は「会社法」にその規定はない。びっくりでしょう?

しかし、会社の定款を作成するのに「実印」が必要になる。つまり、本人の名で印鑑登録ができなければならない。ここが面白いところで、印鑑登録は地方自治体が行うことなので、自治体によって違うのである。○○市では代表取締役になれるが、××市ではダメ、ということもありえるのであった。
が、事実上上記のようなアンバランスなことはないようで、どの自治体でも実印が作れる年齢は「満十五歳以上」となっているようだ。

というわけで「高校生社長」はありうるが「中学生社長」は名前だけ、なのである。

さて、「中学生社長」とか「高校生社長」とかがマスコミで紹介されると、実際にその経営がどうなっているのかを知りたくなるのが野次馬というものであろう(ぉぃ。
実は、会社法の規定で、株式会社は「決算公告の義務」がある。事業年度ごとに、定時株式総会の承認後、遅滞なく、貸借対照表等を公告しなければならない。
公告の方法は、定款に記してある方法によるが、だいたいは官報か、あるいはホームページである。

と・こ・ろ・が――

この義務を守っている会社はかなり少ない。数パーセントしかいないと言われているほどである。
決算公告の義務の懈怠は代表者に100万円の罰則がつくほどの法令違反(会社法976条2項)である。が、上記のとおり、ほとんどの経営者がこれを怠っているのが現実だ。

もし炎上案件の会社があるなら、その会社の定款を法務局から取ってきて、公告方法が官報であるなら図書館へ。ホームページであるならネットを確認し、公告義務を懈怠しているなら、「この会社は決算公告の義務を果たしていない!」と、火に油を注ぐとよい(なにを教えているんだか(苦笑))。

会社としては、毎年、赤の他人にバランスシートなどの懐具合を見られたくないというのが本音で公告懈怠しているのだろうが、会社法で決められた義務なのだから、コンプライアンスは守らねばいけないのである。高校生社長であっても、中学生社長であっても、ね。

ところで、この「決算公告の義務」は株式会社にのみ課せられているもので、旧有限会社、合同会社、合資会社、合名会社にはその義務はない。
決算公告をして、財布の中身を他人に見られるのが嫌なら、合同会社で起業すればよいだけなのである。

これを読んで、SNSではブイブイ言わせていても、けっこうドキリとした株式会社の社長さん、いるんじゃないかな? あなたの会社、きちんと決算公告してますか?
てなわけで、社長の条件とは「印鑑証明を作れる歳で、きちんとコンプライアンスを守れること」ではないかと思うわたしである。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記