2017年06月08日

【日記】「土の家」健在なり

復活節も半ばを過ぎた主日の午後、甘い物好きとしては押さえておきたい「シロノワール」を食べに、細君と一緒に、少し離れたところにある「コメダ珈琲店」へ。

もう少し近かったら頻繁に立ち寄れるのだが、クルマでないと行けないショッピングセンター敷地内にあるので、たまの贅沢である。

というわけで、「シロノワール」と「キャラノワール」を注文。うん、美味い。



細君と「このあたりもずいぶん変わったね」と話しているうちに、ここが、その昔噂になった「土の家」のすぐ近くであることを思い出した。

「土の家」とは、2011年に「ドリームハウス」というテレビ番組で、放送された番組で建てられた注文住宅である。
「ドリームハウス」公式のウェブサイトで、当時の放送を振り返ることができる。これがそのURL

施工主のTさん夫妻は、建築家・山下保博氏の作品がお好きであり、同氏の建てたユニークな家に住みたい、というのがご希望であったとのこと。
そこで山下氏は土の日干しブロックを使って作るという、コンパクトな「勾玉型デザインの家」を設計し、建築。完成したのであった。

ところが当時は、この家のあまりのミニマムさと、それを土の日干しブロックで作るという建築方法にネット中が衝撃を受け、口さがない意見としては「狭っ」「公衆トイレじゃん」「鳥葬のベッド」「地震ですぐ壊れそう」などと、陰口讒言が絶えなかったのである。

上記の公式ウェブではなく、Googleで「土の家」で検索してみれば、当時、この番組を見ていたネット民の衝撃が伝わると思う。

わたし個人としては、けっこうミニマムな暮らしが好きなこともあって、「言われているほどひどくはないのでは。むしろ憧れるなあ」と思っていたものだった。
もちろん、広角レンズによる映像マジックは重々承知しているので、実際に居住したら本当に狭いのだろうが、多くの人が陥りがちな、不必要なものに溢れて過ごす生活よりも、必要なものだけに囲まれて過ごすという、この施工主のご夫婦のライフスタイルに共感するところは多々あったのである。

あれから六年。T氏邸は「あまりの住みにくさにすぐ売られた」とか「落書きされている」とか「荒れている」とかの噂が絶えず、掲示板にはそういう画像も貼られていたりした。

コメダ珈琲で一服したあと、細君と野次馬心を出して、ちょっとその「土の家」を拝見してくるか、と、足を向けた。なにしろ、このコメダ珈琲から徒歩数分のところに、その「土の家」はあるのである。


(クリックで拡大可能。なお、公共の路上から建築物の撮影をすることは著作権法第46条により居住者の許可を得ずとも合法である。しかし表札は個人情報であるため、モザイクをかけさせていただいた)

「土の家」は健在だった。寂れたところなどまったくない。もちろん、拝見したのは路上からの外側だけだが、とても美しいたたずまいである。プランターなども飾ってあり、居住者の心が庭の細部まで行き届いているのがわかる。日々の生活を愛する人が住んでいる息吹がする。
そして表札にも、きちんとT氏の名前が記されている。売却も、引っ越しもされていないということだろう。

今もネットで流れている「売られた」「寂れている」「落書きされている」などというのは、全部、無責任な噂、面白半分につくられたコラージュであった。

この邸宅にお住まいのT夫妻は、あまり騒がれるのがお好きではないのだろう(そりゃ、好きな人がいるわけがない)。ネットでの反論なども一切なさっていらっしゃらないようだ。
この記事もお節介かとは思ったが、あまり無責任な噂や面白半分のコラが真実として流布されるのは、ネットの信憑性の価値を裏打ちできなくなってしまうきらいがあると思い、真実をひとつ、伝えることにした。

現実にお宅を(外側からでも)拝見すると、確かにミニマムである。しかし前記の通り、この居住地は歩いて数分のところに大きなショッピングセンターがあり、モノをため込んでおく必要がないのだ。
正直、生活に一定のテンションをお持ちの方でないと、この家には住めないとは感じた。しかし、モノに溢れ、モノの洪水の中でアップアップしながら生きているわたしは、この小さな家に、憧憬を禁じ得ない。

「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という西村ひろゆきさんの名言もある。

しかし、「それはうそだ」というリソースがひとつもなければ、ネットではうそが真実として定着してしまいがちなパワーがないとは言えない。特にそれが面白半分であればあるほど。

この「土の家」に関して、当時騒いだあなたは、今、どちらの側であっただったろうか?
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記