2017年07月03日

【昭和の遺伝子】ウォークマンの思い出

 今、この原稿は、スマホからBluetoothで飛ばした曲をSoundPEATSのQ12で聞きながら書いている。
 スマホには64GBのMicro SDカードを挿し、それにバッハ全曲集、ショパン全曲集、モーツァルト全曲集、典礼聖歌・賛美歌集、それに好きなポップス集を入れて、気分によってランダム再生したり、通して聞いたりしている。計算はしていないが、もし頭から全曲流していったら、一週間経ってもまだ終わらないくらいのボリュームがありそうだ。
 いやあ、ホント、いい時代になったものである。

 今はそんなふうに言う人もいなくなったが、昭和の時代は、外出中にカセットを聞ける小型音楽再生機器は、ソニー製品でなくても「ウォークマン」と呼ばれていた。もちろん、「ウォークマン」はソニーの登録商標である。「ステープラー」が「ホチキス」と呼ばれてしまうようなものだ。
 ちょっと気を遣う人は、ソニー以外の製品を「ウォーキングタイプ・カセット再生機」と呼んでいた。
 もちろん「ウォークマン」は今でも、シリコンオーディオのブランドとしてソニーから販売されている。

 わたしも昭和の少年・青年だったので、ご多分に漏れずソニー製の「ウォークマン」を購入して楽しんでいたクチだった。
 最初に買ったのは高校生の頃。初代機ではなかった。初代機より少し小型化されたタイプである。まだインジイヤー型のステレオイヤフォンは出ておらず(おじいさんがラジオを聞くような人肌色のモノラルイヤフォンはあった)付属していたのは簡素なヘッドフォンであった。しかしそれもまた、当時は格好良く見えたものだったのである。

 学校に持っていくのは禁じられていなかった(というか、そういう学校は今でもあるのだろうか?)ので、バスの中、電車の中でYMOや中島みゆきさんを聞きながら通学していた。
 この製品は確か単三乾電池二本で稼働だと思ったが、再生可能時間はそれほど長くなく、単一電池二本が入るサブバッテリボックスが付属していた。今で言うモバブーである。
 ただ、そんなに乾電池交換で面倒な思いをした、という記憶はないのである。むしろ今のリチウムイオン内蔵機器の方がバッテリ管理には気を遣うというのが正直なところ。

 まだウォークマンが珍しい頃だったので、学友が「ちょっと聞かして」と言うので快く貸してあげたら、彼の手が滑って床に落としてしまったことがある。自分としては「おいおい勘弁してくれよ」と苦笑したつもりだったが、その学友と隣にいた友人が「そんなに怒ることないじゃないか」と言ったので、けっこう自分の口調が厳しかったのかもしれない、と反省した。
 この事件は30余年以上も前のことだというのに、昨日のことのように覚えている。自分がそれほどキツい言い方をしていないつもりでも、相手にはキツい感じで受け取られてしまうかもしれない、という戒めだ。

 わかっている人はわかっていると思うが、ウォークマン(というよりソニー製品)は消耗品である。
 最初の一台にテープの巻き込みなどが起こり始めたので、二台目のウォークマンを昭和58年に水道橋のキムラヤで購入した。
 今度の機種は、ちょっと奢ってオートリバース&FM視聴可能、なおかつフェザータッチオペレーションな製品を購入。しかしこれは間違いだったと後で悟った。なにしろその分、ちょっと大きめなのである。フェザータッチオペレーションは格好良いが、機械的に再生ヘッドを押し込むわけではないので、なにか不具合があると勝手にヘッドをあげて押し黙る。
 買ってから故障するまでの期間は、前機種よりも短かったと記憶している。

 三台目は、もうソニーにこだわらなかった。というのも、ウォーキングタイプ・カセット再生機」自体がソニー寡占状態から脱して、多種多様なメーカーが出していたし、価格も格段に落ちていたからだ。確か、サンヨーのものを購入したと思う。
 このサンヨーのウォークマンは、未来の細君のクルマの中で役に立ってくれた。というのも、未来の細君のクルマのカセットデッキは早々に壊れてしまい、ドライブ中に音楽を流せなくなってしまったからだ。
 そこで、当時出ていた、シガーソケットから電源を取りつつFMで音楽を飛ばす周辺機器を購入し、それをこのサンヨーの機種につけたのである。
 このサンヨーの機種は実に丈夫だった。車内の高熱や振動にも耐え続け、クルマ自体を廃車するまで使ったと思う。

 ウォークマンを渡り歩いている間、オーディオはCDの時代に入っており、自分もCDウォークマンを使うようになっていたので、カセットウォークマン時代はここで終わった。

 平成になってから、ウォーキングタイプ・オーディオ再生機はMDになった。これはシャープの製品を選択。MDの思い出は、また機会があったらにしよう。

 今、若者の間で、カセットが再び脚光を浴びているという。正直言わせていただければ「はぁ?」という感じだ。
 カセットの方が音が温かいとか、いちいち巻き戻すのがいいとか、そんなのは全部幻想である(バッサリ)。
 ちなみにわたしは、オープンリールデッキも、ソニーの「Lカセット」も使ったことがある世代である。だから断言できる。今のシリコンオーディオの方がすべての点において勝っていると。

 いや、すべての点とまで言い切ってしまうのは早計か。
 少なくとも、ノスタルジーの点では、カセットに軍配があがるのだから。
posted by 結城恭介 at 08:00| 昭和の遺伝子