2017年08月08日

【書評】今日のユイコさん

 秀河憲伸「今日のユイコさん」1〜5巻(完結)

「【書評】自分がツインテールのかわいい女の子だと思い込んで、今日の出来事を四コマにする。」で、「ジト目の女の子が好き」と書いたときから、いつか本作品を紹介したいと思っていた。

 あらすじ――高校一年の男の子、多田野トモヤは黒木ユイコさんとつきあっている。
 ユイコさんは三白眼のジト目の女の子。いつもどこか怒っているような表情で、しかも女の子にしては理屈っぽい。というか、なにか理由をつけないとトモヤとスキンシップもできないタイプ。今時珍しく語尾に「だわ」「そうよ」などとつけたりも。
 そんなユイコさんは自分自身にコンプレックスを持っているが、トモヤは普通の男の子でありながら、そんな彼女を可愛らしいと思い、等身大のおつきあいを続けている。二人の関係がちょっとづず進むにしたがって、それまで孤立していたユイコさんにも友人ができ、彼女自身も変わっていく。



(三白眼だけどスタイル抜群なのです)

 ユイコさんのキャラが立っているが、等身大のラブコメである。特に恋のライバルやさやあて、大きな事件などが出てくるわけでもない。このあたり、「新キャラが出てきてー」、「ライバルが出てきてー」、「ハーレム展開になってー」、などという今どきのマンガと違って安心して読める。
 秀河先生の筆致は優しく、二人を中心に、クラスメートと、ユイコさんの姉(同じ高校に教師としてつとめている)の成長を見守っていく。ふたりの高校一年から二年の最初までを追い(回想では中学時代も)、5巻で綺麗にまとまっている。読後感がとてもよい。

 その昔、まだ東映動画に勤めていたOさんと、理想のヒロイン像について話し合っていたとき、わたしは「怒った顔が美しいヒロインていいですよね」と言ったのだった。Oさんも「それいいねー」とふたりでうなずきあったことを覚えている。


(この凜とした怒り顔、もはやご褒美でございます)


(な、なにを怒っていらっしゃるのでしょう……)

 ツンデレ、というのとも微妙に違う。あれは、人前だとツンツン、二人きりだとデレデレ、というのが元の意味である。ユイコさんの場合、ひっじょーに人間関係の作りかたが不器用なのである。

 そんなユイコさんが素直になる瞬間の表情がいい!


(この落差がいいんだなぁ)


(トモヤに恋敵が? というシーン。美味しゅうございます)

 トモヤとユイコさんの仲は実に初々しく、二人で勉強会のようなイベントがあっても、「このあと滅茶苦茶――」のような進展は、ない。そんな展開を連想する自分が恥ずかしくなるような、清清しいカップルである。


(これはトモヤの妄想。これが限界。いいなぁー三白眼のテレ顔)


(素直なユイコさんもイイ!)

 振り返ってみるとユイコさんの引用成分多めになってしまったが、一にも二にも、このユイコさんのキャラが気に入るかどうかがこの作品の評価になるのだと思う。台詞回しが今の女の子にはないだろう、というところがちょっと気になるが、わたしは大いに気に入ってしまったのであった。
 書いてみて、逆に、台詞回しが今時の女の子っぽかったら、やっぱりユイコさんらしくない気もするし。

 ラストは高二にして、ユイコさんのほうからトモヤに――


(噛んでるユイコさんも可愛い)

 トモヤがいい人すぎてもう、お前ら早く結婚して、二人でも三人でも四人でも子どもをつくって、幸せな家庭を築いてください! ヒューヒュー! 熱いよ、もう!!
posted by 結城恭介 at 08:00| 書評・映画評