2017年08月18日

【カットリク!】編集手帳――ニケのわけがないだろう!

 果たして、この記事をどう書いたら良いのか困惑している。
 2017年8月16日、読売新聞の編集手帳より。


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ギリシャ神話の女神に、翼も凛々しいニケ(Nike=勝利)がいる。
(中略)
昨年のリオ五輪が終わった頃、「読売歌壇」に載った一首を切り抜いてある。<十字切り、ウサイン・ボルトが仰ぐとき神はこの世にいるとおもえり>(館山市・山下祥子)。ニケ様だろう。


 頭痛い……。
 まいった……。

 ええと、「編集手帳」と言えば、読売新聞朝刊の第一面に載っている、歴史の長いコラムである。
 記者もきっと社内から厳選された、有名大卒の学力の高い方で、深い知恵も鋭い見識もあり、長い年月によって培われた物事への洞察力と社会への問題意識を持ち、驚くほどの読書量を誇り、人脈も広く、すべてにおいてわたしなんぞとは比べ物にならないほどの知識人でいらっしゃるに違いない。

 でもね……。
 ええとね……。

「十字を切って祈るのは、三位一体の神つまりキリスト教だから! ウサイン・ボルトがニケに祈っているはずがないから!!」

 実際、ウサイン・ボルトはカトリックで、不思議のメダイを身に着ける程度には敬虔な信者である。

 というか、なぜ、「十字を切る」祈り方で、キリスト教をすぐ連想しないのか。なぜ多神教のギリシャ神話の神に祈ると思ったのか。この記者、根本的に「宗教」というものを基礎からお勉強しなおしたほうがよろしいのではないかと思われる。
 一神教の神に祈っているのにそれを「ニケ様だろう」とドヤ顔で多神教の神に祈っていると書くなど、「宗教」にセンシティブな者なら絶対にしないことだ。

 同時に、「宗教」にセンシティブでないというのは、「人間社会を理解していない」のと同義でもあるのだ。「宗教」を指す英語「religion」とは「再びつなぐ」という意味であり。人と人とを、人と時代とを、人と信念とを結ぶものだからだ。

 ああ、なるべくやわらかく書こうと思っていたのに、やっぱりちょっと本音が出てしまった。いやしかし、こんな記事が校閲部も通って活字になり、全国紙として堂々と配られてしまうのだから、ほんとうにこの国は新興宗教カットリク!に汚染されている。

 ところで、十字の切り方は、カトリックと東方正教会で微妙な違いがあり、それで教派がわかるというおまけつきだ。なおプロテスタントは十字を切らない。このあたりはまた、そのうち、別の記事で。

カットリク!ポイント72――
カットリク!では十字を切って、ギリシャ神話の神に祈っちゃったりする。


 ほんと、勘弁してくださいよ……。
posted by 結城恭介 at 08:00| 新興宗教カットリク!の研究