2017年09月21日

【日記】引用は無断でやるものです。

 ちょっとWebを回ると、こんな文言が目に入ることがある。

無断引用はお断りしています。


 こんな注意書きには、なんの効力もない。なぜなら、「引用は無断でやるもの」だからである。


(写真はWikipedia「引用」のページより引用)

「引用」は「剽窃」や「無断転載」とは違う。著作権法で守られた正当な権利である。

著作権法32条の1――公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。


 ただし、きちんと「引用」にするためには、条件がある。

著作権法48条の1――次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。


 また、文化庁によれば、適正な引用を満たす要件として、以下の条件が示されている。

 ア 既に公表されている著作物であること
 イ 「公正な慣行」に合致すること
 ウ 報道,批評,研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
 エ 引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
 オ カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
 カ 引用を行う「必然性」があること
 キ 「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)


 要するに、引用部分が明確であり、出所の表示がしてあり、引用部分とそうでない(自筆)部分の割合の主従関係が明確であること、これを満たせば「引用」となる。

 以上の「引用」の条件を満たす限り、繰り返して書くが、引用は無断で行うものなのである。
「無断引用はお断りしています」という文言は「このトイレでは排尿を禁止しています」と書くくらい噴飯物でナンセンスな注意書きだということがおわかりいただけただろうか。

 これは文章を書くものだけでなく、マスコミにも当たり前のことだと思っていたのだが、たまに剽窃事件などがあると、記事に「無断引用」という言葉を使っていたりしてゲンナリしてしまう。

 このブログをお読みの方はおわかりいただいていると思うが、わたしはときおり、記事中にボケやツッコミの役割をマンガからの引用で行っていたりする。その場合も、必ず「出所の表示」をしているはずだ。
 書評や映画評の場合、出所の表示は自明なものが多いため、いちいち書いたりはしていないが(必要がある場合は書く)、引用の要件を守っているはずである。

 また、ネットで「拾ってきた」画像を載せることはしない。これらは「孫引き」になり、出所の明示が怪しいからである。
 コラ画像なども、気持ちとしては載せたい、載せたいのだが、それらは著作権上「著作者の同一保持権を侵害する」ので掲載はできない。

「無断引用」がナンセンスな文言だということは、いにしえのパソコン通信の頃から、知っているものは当然のように知っていることだったのだが、Webの個人サイトブームあたりから著作権に疎い人もサイトを作るようになり、なんとなく「無断引用お断り」という言葉が「アリ」なのだというイメージが定着してしまっているようだ。

 繰り返すが「無断引用」などという言葉は、ない。引用は無断で行うものである。

 また、似たような話で、これはさすがにもうネットの常識になったと思っていたのだが、驚くべきことに、まだ莫迦げた文言を書いているサイト(しかも公的出版社などが)もあるようなので、書いておく。「Webにおいてはリンクも無断で行うもの」である。
 なお、活字媒体でのURLの表示などはまた別であるかもしれない。このあたりはまだ議論の余地があるように思う。

「フェイクニュース」が問題になっているが、マスコミ自体が著作権法を理解せず、記事で「無断引用」なる妙な言葉を使ってしまうことがままある現在、むしろマスコミの方が末端の記者にまで著作権法をきちんと学ばせたほうが良いのでは、と思ったりもする。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記