2017年10月16日

【回想録】スタンガンの思い出

「スタンガン」と言えば、もう誰でも「あああのワニ口でバリバリするやつね」と知っているものだが、その昔、まだ出始めの頃は、知る人ぞ知る護身用具であった。

 斉藤由貴さんが若かりし頃、ビデオでのみ発売されたドラマ「漂流姫」の中で、敵をバッタバッタとなぎ倒すのに使っていた――と記憶しているのだが、ここらへんは変質しているかもしれない。

 今でも日本国内では、スタンガンはフツーに買えるのだろうかと調べてみると、特に問題なく購入できるということに少々びっくりしている。
 ただ、電車内への持ち込みなどが禁じられていたり、職質でカバンを調べられたら没収されたり、あらぬ犯罪の疑いをかけられたりする可能性があるなど、あまり実用的に使える護身用具ではないようだ。

 小学生の頃、わたしはスタンガン≠自作したことがある。といっても、006P9ボルトの角形電池を使用し、昇圧した電流をパルスとして電極両端にかける、という代物で、ちょっとビリビリする、といったオモチャ程度のもの。
 さっそく学校に持っていって、度胸のあるやつに試したりしたのだが、電極に使った金属片の方が尖っていて痛いよ、と言われる始末であった。

 うとい方のために書いておくと、電気が体を流れるとき生死をわけるのは、ボルト数ではなく電流量なのである。たとえ君の瞳が100万ボルトを発したとしても電流が少なければ、相手に「地上に降りた最後の天使」と勘違いさせることはできないだろう。
 実際のスタンガンも「何万ボルト」を謳っていても、流せる電流量は数ミリアンペア程度である。

 本物のスタンガンが国内に出始めた頃、何でも持っている畏友R氏が購入し、飲み会でそれを披露したことがある。当時はまだ、こういうのが冗談でできる時代であった。
 皆で回してバリバリやってはその電光に感動である。居酒屋の主人が感心して「娘に持たせようかなぁ」などと言っていた時代であるから、まぁ、のんびりとはしていた。
 せっかく本物があるのだから、そのショックを味わってみないのはもったいない、ということで、わたしの番がきたとき、脇腹に押し当てて、スイッチオン!



 そのとたん、脇腹に激しい衝撃。電撃というより、強い痛みである。いやしかし、思っていたよりマンストッピングパワーはないと感じた。
 おそらく、アドレナリンがたぎっている相手に安易に使えば、逆に奪われ制圧に使われる、という印象。力のない女性や子どもが、これを使えば大の男より有利になるな、という感想はもたなかった。
 実際には、相手に押し当てるより目の前でバリバリやって戦意を削ぐための護身具である。刃物の方がよっぽど恐い。

 護身具としての実用性は、スタンガンより、同時期に売られはじめた催涙スプレーの方が高そうに思う。残念ながら、こちらは試してみる機会が今までない。

 なんにしろ、この治安のいい日本、若い女性がこんなものをカバンに潜めることなく、夜中に一人歩きしても大丈夫な街であってほしいと願う。

 なにで読んだか覚えていないが、暴漢が一番警戒して狙わない相手は「踊りながら帰っている人」だとか。
 暴漢の気持ちはわからないが、確かにそういう相手とは、ちょっと距離を隔ててすれ違いたいもの、かも。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録