2017年11月01日

【回想録】側弯症

 なぜだか、左手が背中の後ろに回せなくなってしまった。
 左手を後ろに回そうとすると、二の腕と肩に痛みが走って、だいたいベルトより10センチから上にあげられない。
 以前はそんなことはなかったと思うのだが、今月にはいってからこのことに気づいた。おかげで、背中がかゆいときに閉口している。今は定規や棒でしのいでいるが、そのうち百均で「孫の手」を買ってこようと思っている。

 あぁ、こんなときに孫がいてくれれば(ぉ

 それで思い出したのが、中学校のときに行われた「側弯症」のテストである。
 わたしの小・中学校は実験校でもあったので、他の学校に先駆けて、なにか生徒にテストを実践することがあった。そんなわけで、側弯症の検査も、他校より一足早く、実験的に行われたのである。
 なので、わたしと同世代および上の世代の方は、側弯症のテストは知らない、という方が多いようだ。

「側弯症」――正確には「脊柱側弯症」の検査は、今はどこの学校でも行われているそうなので若い方はご存知だと思うが、背中にシマウマのような影を投影して、そのモアレが左右対称かどうかで、脊柱が曲がっているのかどうかをチェックするのである。

 当時は「側弯症」という名前すら知られておらず、検査する方も、まだ手慣れていなかった感があった。
 この一次スクリーニングテストに、わたしは引っかかってしまったのである。

 後日、引っかかった生徒が大学病院に送られた。そこではなぜか医師が、再テストの前に生徒たちにスライドを見せて、側弯症について解説してくれたのであった。
 医学写真というものは、ともすれば下手なホラーより人間の恐怖感を煽るものだが、その日集められた中学生たちは、脊柱がS字に曲がったレントゲン写真に震えあがった。
「肩掛けカバンを片方でばかりかけていると、こうなっちゃう可能性がありますよ」と脅かされたことを覚えている。
 再テストでわたしは側弯症ではなかったと診断された。どうも、ただ姿勢が悪いだけだったらしい。
 というか、一人も本物の側弯症として診断された生徒はいなかったように記憶している。

 実は当時、側弯症は専門家もよくわかっていない疾患であった。上記に書いた「カバンを片方の肩でばかりかけていると――」のくだりは、現在では明確に否定されているという。ただ、原因そのものは未だ不明のようだ。

 わたしが検査を受けた頃は「姿勢が悪いことも原因になる」と言われたものだが、それも今は「根拠のないこと」とされている。
 女子の患者数が男子の5〜7倍だそうだが、あのとき、チェックにひっかかったのは、男女同数くらいではなかったかなぁ。

 上記に記したとおり、カバンを片側にかけ続けたり、姿勢が悪いことが側弯症の原因ではないことは、重ねて書いておきたいと思う。
 だからこそ、側弯症の検査と治療は大切である。努力や気をつけることで治るものではないからである。

 本当のことを言うと、今回、この記事を書こうと調べるまで、カバンの片側掛けや姿勢の良悪が側弯症の原因ではないと明確に否定されていることを知らなかった。

 この試験に引っかかってからしばらく、わたしは左にばかり掛けていたカバンを右に掛けなおしたり、猫背を治そうと努めてみたのである。しかし数週間で元の習慣に逆戻り。結局カバンは左に掛けているし、猫背もひどいものである。
 いつかは側弯症になってしまうのかなぁ、と思っていたが、とりあえず、背骨は真っ直ぐなまま半生を過ごすことができた。
 当時の医者が子どもたちに話した、あの脅かしはなんだったのだろう、と恨みごとをボソリ。

 根性は曲がってしまったかもしれないけどね。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録