2017年11月22日

【回想録】メンテ落ちチャット

 今でこそ、スマホを使いそのテのアプリで、グループチャットなどがいつでもどこでもいくらでもできる時代だが、パソコン通信時代、チャットはブルジョアジーの楽しみであった。
 なにしろ、電話代にプラスしてパソ通会社へのアクセス料金が一分いくらでかかるのである。料金の安い深夜にチャットしても、一時間で五百円は確実に飛んでいく。十日やれば五千円、常連にでもなってしまったら、一ヶ月で一万四千八百円以上也。とてもではないが、フツーのネットワーカーが毎日やるのは無理な話である。

 そこでわたしとわたしの仲間たちは、月に一回、チャットの日を設けて、その日に楽しむことにしていた。それがタイトルの「メンテ落ちチャット」である。
 そう、普通の日にチャットするのではなく、ニフティサーブがメンテを行う直前一時間前からチャットを始めるから「メンテ落ち」。



 ニフティサーブは月に一回、午前二時からしばらく(時間失念)、すべてのアクセスを途絶してメンテナンスをする日があったのである。
 そこで、メンテの日の午前一時からチャットを始める。一時間後の午前二時になると、皆、強制的に「落とされる」ので、無駄に話が長引いてお財布が痛むこともない、という、実にエコなチャットであった。

 そうそう、一口にチャットと言っても、ニフティサーブにはいくつかチャットがあった。ニフティの仕組みをたとえて言えば、まず大通りがあって、そこに大公園(ニフティ全体のチャットや掲示板)がある。
 その通りに軒を連ねている専門店(フォーラム)があり、そこにも個別に掲示板やチャットがあるのである。実際には「掲示板」はほとんど機能しておらず、今の皆さんが想像できる「掲示板」は「電子会議室」と呼ばれていた。
 で、フォーラムごとのチャットも、それにならって「リアルタイム電子会議室」と呼ばれていた。通称RTC。2チャンネルあり、好きな方に参加できる。

 といっても、前述の通り、パソコン通信のチャットは高い。昼間アクセスしても、RTCにまず人はいなかった。深夜、電話代とアクセス代が安くなってから、常連のブルジョアジーが集まり、我々プロレタリアートは電子会議室で知っている人がいたりすると、ちょっと入って挨拶、すぐに抜け、と、そんな感じである。

 大通りの「ニフティ全体のチャット」は出会いの場と化していたり、ちょっとふつうの感覚をお持ちでない方も多かったので、我々はそのフォーラムRTCの方でメンテ落ちチャットを楽しんでいた。

 リアルタイム会議室と言っても、特に「会議」をしているわけではない。ただ仲間内で集まってダベっているだけである。みな、手練れのPC使いだったので、会話は早く、ノリのボケとツッコミが決まると実に楽しい。
 以前「【回想録】カーナビの思い出」でソニーのGPSを貸してくださったK氏が、このチャットに、シャープのPDA「ザウルス」で乱入してきたことがある。ご存知の方はご存知だと思うが、ザウルスにキーボードはない。手書き入力なのである。「今、ザウルスの手書き入力でやってます」というK氏に一同爆笑、であった。

 さて、メンテが午前二時に始まり、システムに落とされる、と言っても、全員同時に、ではないのである。そこはやはり全国からチャットしているわけで、網の違い、サーバの違いから、早く落とされる者、最後まで残る者、悲喜こもごもである。
 ログアウト時間は記録されるので、翌日、会議室の方に「自分は何時何分に落とされた」と報告。一番最後まで残った者が、その「メンテ落ちチャット」の優勝者となる。特に賞品などはでない。

 後期になると、皆で示し合わせて、閑散としているフォーラムのRTCを乗っ取り(というと言葉は悪いが、誰もいないので、ちょいどお邪魔している感覚である)。そちらで話したりしていた。
 SYSOPにはユーザーのアクセス総量によってキックバックがあったそうだから、ギブ&テイクなところはあったのである。

 この懐かしい「メンテ落ちチャット」だが、時代がインターネットへシフトしていくのに従って、当時、台頭しはじめたヤフーメッセンジャーでのチャットへとみな移って行き、そもそもニフティ自体に全員がアクセスしなくなって、自然、とりやめとなった。
 今このときのメンツはSkypeチャットに落ち着いている。

 この記事を書いていて、深夜二時に強制的にログアウトされ「あー、やられたー」と苦笑していたあの感覚を思い出している。
 当時のメンツで、今は連絡途絶してしまった方々も多い。みなさん、元気にしていらっしゃるだろうか。もし、この記事で「ハタ」と気づかれた方がいらっしゃいましたら、メールいただければ幸い。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録