2018年01月23日

【回想録】骨折

 あれは自分の結婚式、十日前のことであった。
 トイレの扉を開けたとき、扉と床の隙間に左足の小指が入っていたのに気づかず、そのまま足を持ち上げてしまったのだ。

 わたし「おぎゃあ!」


(山田芳裕「デカスロン」16巻より引用。名作です)

 激しい痛みが左足の小指を襲った。これはやった、やってしまったと思った。
 部屋で結婚準備をしていた婚約者時代の細君が飛んできた。

 細君「どうしたの?」
 わたし「やった、やっちゃった。左足の小指、骨折しちゃったかも」
 細君「ええっ!」

 見れば左足の小指が赤く腫れ上がっている。曲げようとすると激痛が走る。これはやっぱり、やっちゃったんじゃないかなぁ。
 頭の中に、松葉杖をついてお客さまを迎える新郎の情けない図が浮かんで、あーあ、ついてない、と思ってしまった。

 が、未来の細君は、どっしりとしたものだった。

 細君「そんな簡単に骨折なんてしないよ。とりあえず病院行ってきなさい」

 ふだんは、細君の「病院行ってきなさい」には軽く抵抗するわたしなのだが(「【日記】生理(ぢ?)」参照)、このときばかりは結婚式も控えているので、すなおに病院へ。そこでレントゲンを撮っていただくと、みごとに――

 お医者様「骨は綺麗ですね」

 あれぇ……。あんなに痛かったのに。今でも触れるだけでジンジンするのに、骨は大丈夫なのだった。
 結局、単なる打撲ということで、シップして固定。治るのに一週間くらいかかったと思う。
 足の指に包帯を巻いているので、外出もスニーカーを突っかけるだけ、そんなビッコを引いた足で、国技館で開かれた「ロボコン」本戦を観にいった記憶があるのだから、「骨折ではなかった」という心理的な安心感は強かった。
 結婚式は、無事、靴をちゃんと履いて、足をひきずることもなく迎えることができた。
 ただしその三日前に風邪を引いて寝込み、二日で治し、当日の朝はX68000無印のROM交換をしていた(笑)。なんとも密度の濃い一ヶ月だったなぁ、と、今になって思う。

 というわけで、今までわたしの人生で、「骨折」したことは幸いないのだが、「ヒビ」をいれたことはある。
 あれは小四のとき、放課後、校庭のグラウンドで友人と「グライダー」を楽しんでいたときのこと。ちょっと手が滑って、体の左側を下にして落下してしまったのである。左肘がドッカと砂場の淵にぶつかった。
 不思議なことに、そのときは、あまり痛くなかったのである。
 家に帰ってからも普通に過ごし、入浴し、眠った。
 翌朝、左腕を動かそうとすると――

 わたし「おぎゃああ!」


(山田芳裕「デカスロン」13巻より引用)

 左肘が焼けるように痛い。曲げると金串で刺したような鋭い痛み。あまりの大声に、母が驚いて部屋にとんできたくらいであった。
 病院にかかってみると――ヒビがはいっていた。あの痛みで「ヒビ」なのだから、骨折だとどれくらい痛いのだろう。ちょっと、想像したくない。
 結局そのときはギプスをつけて二週間固定。ギプス生活よりも、それを取ったあとのリハビリの方がつらかった。もともと体が硬いのに、リハビリの先生が無茶をして腕を曲げようとするのである。その激痛の方が、ヒビより痛かったという小学生時代の思い出。

 話を元に戻して結婚式前後の話。わたしと細君は新婚旅行でスキーに行ったのだが、麓ではしゃいでいるグループがいたのである。元気だなぁ、と二人でほほえましく思っていたが、何度か頂と麓を往復しているうちに、そのグループで一番目立っていた男の子が、痛みにうなり声を上げながら救助のスノーモービルに乗せられているのを目撃してしまった。どうやら、やってしまったらしい。
 あぁ、あんなに元気だったのに……。と、細君と二人、顔を見合わせたことを思い出す。

 皆様も怪我や事故にはお気をつけて。

 追記:トイレの扉と床の間に左足小指を挟むのは、十年前にもやっている。このときは前の経験があったので病院にはいかなかったが、懲りないものである。若くない今は、それこそポキリといってしまってもおかしくない。気をつけるべし>自分。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録