2018年01月30日

【日記】歴博「江戸グルメ案内」

 豆腐が原因で、細君とケンカしたことがある。まだ若かった頃の話だ。
 あれはわたしがトンカツを食べたくて、トンカツ専門店に入ったときのこと。わたしがカツ丼を注文したら、細君は冷ややっことコロッケとゴハンを単品で注文したのである。

 わたし「せっかくトンカツ専門店に来たんだから、そういうものを食べなよ」
 細君「だってわたし、トンカツ嫌いだし!」
 わたし「だったら最初からここはイヤだって言えば良かったじゃないか」
 細君「だってあなた、食べたかったんでしょう? トンカツ」

 これでケンカである。まあ、わたしも大人げなかった。今だったらこんなことでケンカしたりしない。わたしはカツ丼、細君は冷ややっことコロッケとゴハン単品をとれば済むことだ。
 ひとつ言いわけをさせていただければ、細君の偏食はけっこうひどいのである。おかげで、外食のときはかなり気を遣う。なんでもあるファミレスならばまだ良いが「あそこのマグロ丼は生臭くてダメ」とか、細かいところまでチェックが入るのである。
 なので最近は、細君が好きなものをふたつとってもらって、半分こにしている。わたしが食にあまりこだわらないからこそできる、夫婦の工夫である。

 と、ここまではマクラで、今回、国立歴史民俗博物館で「豆腐百珍」の本物掲示などがなされるという特集展示「江戸グルメ案内」が開かれるというので、二人で教会の帰りがてら、寄ってみたのであった。



 さて、まずは腹ごしらえ、ということで、歴博には何度もきたことがあるが、そのたびに「食べようかどうしようか」と悩んでスルーしていた「古代米を使ったメニュー」があるレストランへ。「中国で皇帝に献上していたという古代米」である。
 注文したのは「古代カレー」と「古代ハヤシ」。あと「古代カツカレー」というのもあるそうです。


(松本零士「宇宙戦艦ヤマト」1巻より引用。いやここでふき飛ばしちゃいけませんが)



 これが「古代カレー」で――



 これが「古代ハヤシ」。
 古代米の味は、精米された白米とそうかわりがない。むしろ、市販の五穀米とかのほうがダメな人が多いと思う。たまにちょっと粒状感を感じるくらいで味はいい。
「古代カレー」のほうは古代米の力にちょっと負ける感じ。もしひとりで行って食べるのなら、「古代ハヤシ」のほうがお勧めかな、と、いうのが、細君とシェアして出した結論。
 この古代米、歴博のお土産コーナーでも販売しているので、気に入ったかたはお土産にもできる。

 さて、徳川機関長からエネルギー充填120パーセントの連絡もあったので――


(松本零士「宇宙戦艦ヤマト」1巻より引用。ヤマトネタはここで終わりにしますハイ)



 目的の「江戸グルメ案内」は、第3展示室の特集展示。
 ちょっとパンフを引用してみると――

 今日、テレビのグルメ番組や情報誌、あるいはインターネット上のグルメサイトなど、食べ物屋に関する情報は巷に満ちていますが、江戸末期の江戸の町も負けてはいませんでした。
(歴博「江戸のグルメ案内」パンフより)


 という内容で、当時の江戸の人々がどんなものを食べていたのかがサンプルで展示してあったり、食楽街の様子がミニチュアになっていたりするのだろうか、と、細君と二人してわくわくとコーナーへ入ったのだ、が――

 あらら、そこでやっていたのは文献の展示ばかり。ちょっと肩透かし、ではある。
 撮影はフラッシュを焚かなければOKなので、適当にパシャパシャと。



 これは「八百善御料理献立(江戸料理茶屋番付)」というもの。江戸の有名な料理茶屋を相撲の番付に模したものだという。



「即席会席御料理(江戸料理茶屋番付)」これも相撲番付になぞらえたもの。
 まああれだ、当時の「食べログ」星取表みたいなものですかね。



 美味いものめぐりのすごろくなんかもあったりして、けっこう当時の人も食べ歩きが好きだったのだな、というのがわかって楽しい。



 これが1781年に作られた「豆腐百珍」の本物。あの「美味しんぼ」の豆腐の回でも触れられている。


(作:雁屋哲/画:花咲アキラ「美味しんぼ」22巻より引用)

 なお、これを作った酔狂道人何必醇(すいきょうどうじんかひつじゅん)の本職は大阪の篆刻家・曽谷学川。料理の専門家ではなかったのですな。
 この「豆腐百珍」は多種多様な豆腐の料理法を六等級にわけて解説したもので、当時、ベストセラーとなった――という話はよく聞くが、江戸時代のベストセラー≠ェ何部くらいだったのかはちょっとわからない。
 続編も出て、当時の料理本ブームの火付け役となった一書だという。

 などという知識ばかり脳みそに入れて、どうも、江戸時代の味≠ニいうものが伝わってこないのは、やはり展示が紙資料ばかりだからか。このあたり、細君とも「もうひと工夫あっても良かったよね」と意見が一致。

 展示を出て、おみやげもの売り場へ。「江戸グルメ案内」に関連して、江戸時代の淡雪豆腐にちなんで作られたお菓子「あわ雪豆腐」四種類と、「あわ雪純白」「壷しるこ」が販売されている。



 せっかくだから、おれはこの純白の「あわ雪」を選ぶぜ、というわけで、「あわ雪純白」。それに四種類の「あわ雪豆腐」も買ってしまった。





 なお、この「あわ雪純白」と、四種類の「あわ雪」。歴博では「限定商品」だが、販売元の愛知県の「備前屋」さんではネット通販している。
 歴博はわりとコラボ商品をおみやげ屋さんで売っていたり、しかもそれが即完売になってしまったりするのであなどれないのだが、今回は急いで買うこともなさそうだ。

 さて帰宅して、お土産の「あわ雪純白」をいただいてみる。これはやっぱり日本茶でしょう。



 食感はメレンゲ。甘さはその名のとおり「あわーい」感じ。うん。こういう上品な甘さもいい。甘党界のお嬢さま、といった雰囲気。洋菓子のクリームはもちろん大好きだが、こういうホッと甘味するのもいい。

 江戸時代の死因に「虫歯」はわりと多かったという話がある。永倉新八は虫歯放置の末に敗血症で死んだ説、将軍家茂も遺骨調査すると31本の歯のうち30本が虫歯だったという話もある。

「あわ雪」より甘ーいものを食べられて、その後、歯を磨ける、我々二十一世紀の人間は、本当に恵まれているのである。

 なお、他の四つの「あわ雪」は、あわよくば別の【日記】の甘いもの記事にできればと目論んでいる(笑)。

 国立歴史民俗博物館の「江戸のグルメ案内」は2月4日まで。一般展示の中に設えられた特集展示なので、入館料のみで見学できる。
「江戸のグルメ案内」だけでなく、館内全部を見て回れば、けっこう楽しく、また、日本人の歴史と民俗性というものを考えさせられる。
 気になる異性と、今週末のデートにいかが?
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記