2018年03月03日

【日記】細君の中の人

 結婚して十年ほど経ってからであろうか。わたしは気づいてしまった。どうやら、細君の中には細君を操縦≠オている別の人がいるらしいのである。
 表現が難しいのだが、細君は細君である。しかし、その細君の心身は別のなにかが操っている=Bそんな感じ。
 おそらく実際はわたしの想像を超えて全然違うのだろうが、二十一世紀に住むわたしたちがわかりやすい俗な例をあげて言えば、細君はどうやら、わたしの妻となるべくこの地球に派遣されてきた謎の存在なのだが、それを操っているのは別の星の「細君操縦担当者」である、ということである。


(いわさきまさかず「ケメコデラックス!」1巻より引用。こんな風に入ってる訳ではありませんが……)

 そしてこの「担当者」はひとりではない。たまに入れ替わる。むしろ、この「入れ替わり」があったことで、わたしは真実に気づいたのである。

 細君と世間話をする――。

わたし「以前、あの喫茶店でお茶したよね。懐かしいなぁ」
細君「え、そんなことあったっけ? 全然覚えてないんだけど」

 それが月日が経って、細君の方からこう言ってきたりする。

細君「あの喫茶店、前に入ったよね。懐かしいー」

 全然覚えていない、といった口から、こんな台詞が出てくる。これはおそらく、中の担当者が入れ替わったとき、申し送り状にミスや抜けがあったという証拠なのである。
 こんなことが、一回や二回ではない。先日も――

細君「クリスマスの夜のミサって17:00からだっけ?」
わたし「いつもは19:00からだけど、今年は待降節第4主日と重なるから17:00だよ」
細君「りょ」

 ところが数日後、こんなことを聞いてくる。

細君「クリスマスの夜のミサって、19:00からだよね」
わたし「だからぁ。この前も言ったけど、今年だけは17:00からだから」
細君「りょ」

 さらに数日後、こんなことを聞いてくる。

細君「クリスマスの夜のミサって、いつも17:00からだっけ?」
わたし「どゎから! それは今年だけなんだって!!」

 どうもこの短期間の間に、細君操縦担当者に激しい入れ替わりがあり、そのとき、情報の申し送りにかなりの齟齬が生じていたようなのである。

 こういうことが度々あるものだから、わたしはそのたびに探りを入れてみる。

わたし「また担当者が変わったの?」
細君「担当者なんていないって。わたしはわたしだから」

 この答えは一貫している。その点も怪しい……。
 わたしはうたぐり深く、さらに、愛する細君の動向はすぐに気がつくものだから、どうやらこの担当者は無限にいるわけではなく、何人かのグループが交代制でやっているらしいことにも気づいた(多重人格、というわけではないですヨ)。

 もし、わたしがある種の心の病だったら、細君がなにかに乗っ取られた! と騒ぎ出すかもしれないが、わたしは真実に気づいてしまったのでそんなことを言ったりはしない。
 細君はわたしのもとに遣わされた、神よりの御使いなのである。ただきっと、神の御使いでも常勤はつらいので、三交代か四交代制でわたしの相手をしているのだな、きっと。
 だからむしろ、わたしはそのことを楽しんでいたりする。

 今のところ、確実な尻尾をつかんではいないが、細君の言動から察するに上記の考察はあたっているはずだ。それに、もし確証をつかんだとしても、わたしはそれを漏らさない。そんなことをしたら細君が「ズバコーン」と消えてしまうかもしれないから(「ズバコーン」がわからない方は「ズバコーン 映画」で検索のこと)。

 あーでもここに書いちゃった。えっと、これはわたしの妄想です。神さま。細君はひとり。わかってますよぉ。中の人なんていませんって。

 でも、フフフ。わたしが死んで煉獄で清められ天国へ行ったとき、きっと神さまが「サプラーイズ! 実は君の奥さんは御使いで、担当者が三交代制でやっていましたー」とやるに違いないのである。今から楽しみだ。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記