2018年03月04日

【昭和の遺伝子】トルコ風呂の思い出

 なんてないよ!
 ないからね!
 本当にないんだから!

 だってその頃、わたしはまだ小中高生である。
 たしか、トルコの青年より、「日本ではトルコ風呂という名前が性風俗施設の名前として使われていてショックを受けました」という新聞投書があり、トルコ風呂が全国的に「ソープランド」に変わったのがわたしが十八になった頃。

 というわけで、「トルコ風呂」の思い出は……あるんだなぁ、しょうもないことだけれど(笑)

 これも今では「威力業務妨害」とかの犯罪になるだろうと思うが、もう時効なので書いてもいいだろう。

 中学生当時、われわれ悪ガキの間で、トルコ風呂に電話を掛けて予約を取るという遊びが流行ったのである。
 わたしの住んでいる地方都市には、そういった風俗が有名な歓楽街があり、誰かが予約用の電話番号を入手してきたのだ。
 で、どこから電話をしたかというと、休み時間に、学校の赤電話(公衆電話)からやるのである。
 ちなみに当時、ナンバーディスプレイなどというものはなく、電話はイタズラし放題の時代であった。
 主犯はF君であったと思う。ターゲットとなったのは、女々(めめ)というトルコ風呂。仮名ではない。実在である。こんなふうに書けるのも、今は存在しないから。

F君「もしもし」
相手「はい、女々(めめ)です」

 全員、受話器の受話側に耳をひっつけて、相手の声を聞いていた。相手は丁寧な男声であった。

F君「あのー、あのー、予約を取りたいんですけど」
相手「はい、ご予約ですね。何時からですか?」
F君「えっと、8時からで」
相手「8時からでいらっしゃいますね。ご希望のお相手はいらっしゃいますか?」
F君「どんな人がいますかー?」
相手「その時間でしたら、×さんとか、○さんとか」
F君「じゃあ×さんで」

 まわりはもう、爆笑をこらえるので大変である。

相手「それでは、8時にお待ちしております」

 電話が切れて、もう全員、腹がよじれるほど笑った。
 いやぁ、本当に悪いガキどもであった。

 これに味をしめて、F君とその仲間たちは、その後何度も同店にニセ予約の電話を入れるイタズラを繰り返したのであった。
 しまいには――

F君「えーっと、胸が大きくて脚の綺麗な人がいいんですけど」
相手「……おまえらいつものイタズラだろ! いい加減にしろ!!」

 ついに相手にバレて怒られガチャギリされてしまった。まあ当然である。当時の電話番の方、悪ガキで本当に申し訳ない。

 さらにその後、F君と仲間たちは、女々の建物の写真を撮りに盛り場まで行って、当時はまだフィルムだったカメラで数枚、同店の写真を撮ってきたのだった。
 現像のとき、写真屋に言った台詞がまた可笑しい。

F君「この写真、ひょっとしたらUFOが映ってるかもしれないんですよ!」

 まあそんな言い訳でもしなければ、中学生がトルコ風呂の写真を現像なんて、ちょっとできない時代ではありましたね。

 というわけで、UFOが映っているかもしれない女々の写真を見せてもらったかどうか、わたしにはその記憶がない。
 バブルを経て、歓楽街も寂しくなり、今は同店もなくなってしまったのは前述の通り。

 中学時代から予約電話で鍛えたF君が、大きくなってトルコ風呂からソープランドに変わったお風呂屋さんに行ったのかどうかは、杳としてしれない。

 今でも、この歓楽街の近くを歩くと、「UFOが映ってるかもしれないんです」と言ってカメラ屋に現像を頼んだF君のことを思い、クスリとしてしまう。
posted by 結城恭介 at 08:00| 昭和の遺伝子