2018年03月08日

【映画評】グレイテスト・ショーマン

 いきなりだが、血液型性格診断である。

 A型のあなたは、いつもは慎重ですが、ときとして大胆なときがあります。そんなあなたにはハッピーエンドの映画がお勧め。
 B型のあなたは、有無を言わさない行動力がありますが、それをちょっと後悔するときもあります。そんなあなたには、ミュージカル映画がお勧め。
 O型のあなたは、おおらかですが、実は繊細な感性も備えています。そんなあなたには、シンプルなあらすじの映画がお勧め。
 AB型のあなたは、大勢でいることが好きな反面、孤独を楽しむ術も体得しています。そんなあなたには、破天荒な主人公の映画がお勧め。


 実はこの性格診断、全くデタラメである。
「誰にでも当てはまる曖昧で一般的な性格を、自分に当てはめて納得してしまう」という人間の心理を言ったもので、これを「バーナム効果」という。

 そう、この映画「グレイテスト・ショーマン」の主人公、興行師「P.T.バーナム」の名から取られた心理現象なのである。彼は「we've got something for everyone――誰にでも当てはまるなにか≠ェある」という言葉を残しており、それにちなんでつけられた心理効果なのだそうだ。

 かように、実在のP.T.バーナムは人間心理を熟知した、けっこうな山師だったようである。
 しかし、そのP.T.バーナムを主人公にしたこのミュージカル「グレイテスト・ショーマン」は、じつに素晴らしい映画であった。



 ニャンニャンニャンのネコの日、カルディでネコトートをゲットしたあと、一人でふらりと寄った映画館で本作「グレイテスト・ショーマン」を観て、あまりの良さに感激し、後悔してしまった。細君と一緒に観なかったことを。
 そこで今週の日曜、細君を誘って二人で観劇。わたしが同じ映画に二度足を運んだことは初めてかもしれない(その昔は同じ映画を、劇場を出ない限り何度も観られたが、それは除く)。

 ストーリーは単純である。主人公バーナムの少年時代から結婚。フリークスを全面に押し出したサーカスの興行師として成功するまでの苦労と挫折と栄光。それでも上流階級の人間に見下される悔しさと、それを見返すさらなる猛進。それによって見失う家族との愛と、それの再発見。そしてサーカスの炎上、崩壊という悲劇の末、フリークスの団員たちも家族であったという発見と、弟子との友情などなど。
 シナリオに、たとえばフリークスに対する深い理解や、マイノリティに対するポリティカルコレクトネス的視線などはほとんどない。
 なにか考察したり、暗喩を紐解いたり、そのような仕掛けがないぶん、批評家受けは悪いだろう。実際、彼らのつけた点はそうよくないという話だ。

 しかし、この映画はそれでいいのだ。
 この骨太のシナリオに、見事な音楽とダンスが華を添える。いや逆だ。音楽とダンスを支えるために、シンプルなストーリーがあると言ってもいい。

 ミュージカルには、音楽とダンスで心情を表すタイプと、シナリオを進行させるタイプの二種類がある。この映画は明らかに後者で、じつにテンポがいいのだ。少年時代から、上流階級の少女との恋、就職、迎えに来て結婚、子どもができるまでを、一気に一曲で表現してしまう。このテンポの良さがじつに心地よい。

 早速、オンラインでOSTを購入してしまった。これが聴き止めることができない。一曲目の「The Greatest Show」から、最後の「From Now On」まで聴き、またリピートして聴いてしまう。
 比べるのはなんだが、同じミュージカルでOSTも買った「LA LA LAND」は、「Another Day Of Sun」「Someone In The Crowd」「Audition」の3曲ばかり聴いてしまうのだが、本作のOSTは入っている11曲全部がお気に入りになってしまった。

 ストーリーは単純と言ったが、けっこう好きなシーンもある。バーナムに批判的だった批評家が、サーカスが炎上、崩壊したあと、バーナムに「わたしが別の評論家だったら、こう書いたろう。人類の祭典≠ニ(意訳)」というシークエンスにはジンときた。
 うちひしがれたバーナムを、フリークスたちが家族としてバーに励ましに来るラスト近くのシーンもいい。
 そして、メインキャラの陰で、バーテンのダンスも出てくるたびにキレッキレである。本当に細かいところまでダンスが見事で、三回、四回と観たくなる映画である。

 バーナムに心を寄せる歌姫リンドの曲「Never Enough」もまたいい。特に頭に常駐しやすい。もうネバネバである(聴けばわかります(笑))。

 わたしはわりと映画を、劇場で観る、家のテレビでDVDで観る、PCでストリーミング視聴するということに、そう差を感じないタイプだが(本当にいい映画は、どんな媒体で観ても心に残る)、本作に関しては、是非とも、是非とも、劇場でやっているうちに観ていただきたいなぁ、と切に願う。

 そしてもうひとつアドバイス。観るときは、なるべく大切な人と一緒に。配偶者や、恋人。これから大切にしたいと願っている人を誘って、並んで観ると感激ひとしおな映画だ。
 観終わったあと、映画館を出て、相手の手を取ってクルクル回って踊りたくなる映画はそうそうない。あぁ、わたしも五十肩の痛みがなければ、映画館近くの港で細君をクルクル回したかった(笑)。

 そして一生の思い出になる映画だと思う。
 もし不幸にして別れてしまっても、「あの映画を観たときは幸せだったな」と、ふりかえって、暖かい気持ちになれるに違いない。

 わたしがこんなに映画をベタ誉めすること、そんなにないでしょ?
 それだけお勧めなんですよ、ホント。
posted by 結城恭介 at 08:00| 書評・映画評