2018年03月21日

【映画評】ブルース・オールマイティ

 ジム・キャリーは特別好きな俳優というわけではないのだが、「マスク」や「トゥルーマン・ショー」は大好きである。そしてこの「ブルース・オールマイティ(2003)」もお気に入り。実はけっこう、ジム・キャリー好きなのかもしれない。

 あらすじ――テレビ局ニュースリポーターのブルース・ノーランは、今日のナイアガラの取材こそは、どんな道化でも喜んで演じるつもりだった。なにしろ、アンカーマンの引退にともなって、次こそは自分が、という目が出てきていたからだ。
 ところがその取材中に、ライバルのエヴァンがアンカーマンの座を得たことを知ったブルース。自暴自棄になって、リポートは滅茶苦茶に。そして局はクビになり追い出されてしまう。しかも、やけくそついでに浮浪者を助けたらチンピラどもにリンチされるというおまけつき。



 ブルースは呪う。神はえこひいきしている「神は僕を無視している」、「あんたは職務怠慢だ」と。



 とたん、彼は不思議なポケットベル番号「5502」に呼び出される。無視したブルースだったが、翌日もしつこくこの番号に呼び出され、電話をかけてみると、相手は言った。「出世のチャンスを奪われた? 君より才能のないやつが横取りした? 君はブルースだね。じゃ、君に仕事がある。住所は――」
 ブルースがそこへ行ってみると、そこは外見ボロボロのビルディング。中のオフィスは真っ白でなにもない。清掃人がひとり、働いているだけだ。



 ドタバタの末、この清掃人こそが神≠セと知ったブルース。そして神≠ヘ「文句があるなら君が神の仕事をしろ」と伝えるのだった。



 この真っ白なオフィスのシーンのドタバタが、ジム・キャリーらしくて楽しい。神様役は見てのとおり、モーガン・フリーマンである。
 ところで謎の番号「5502」はなにかキリスト教か聖書由来なのかなぁと調べたが、ちょっとわからなかった。意味があるのかないのか、謎である。

 半信半疑のまま、ビルを飛び出したブルースは、レストランに飛び込んでトマト・スープを注文。そこでモーセのごとく、スープを二つに割るという奇跡を起こす。





 このあたりでもう爆笑である。

 自分が神の力を引き継いだことを知ったブルースは、もうやりたい放題。ブティックのショー・ウィンドウで一瞬にして気に入った服に着替え、前回やられたチンピラを叩きのめし、さらにはスクープをモノにしてテレビ局に復活。特ダネにつぐ特ダネをゲットして「MR.EXCLUSIVE」とまで呼ばれるように。
 さらにアンカーを務めていたエヴァンのろれつを回らなくして、自分がアンカーになるという道筋をつけるのだが――

 ブルースは大切な「神の仕事」を忘れていた。人々の祈りを聞く、という仕事である。頭の中に人々の祈りの声が山ほど押し寄せてくる。
 この祈りを具現化するシークエンスがまた楽しい。最初はファイルボックスだったのを、次はポストイットで整理しようとするが、部屋中が付箋だらけに。



 最終的には――



 オンライン化してしまうのだ(笑)。
 人々の祈りをダウンロードするが、これが朝までかかるというのは、ナローバンドなのか祈りが多すぎるのか。とにかく全部の祈りを全部かなえてしまうという暴挙に出たブルース。
 それでいいと思っていたブルースだったが、人々の祈りに尽きるところはない。街は混乱し暴動が起こり始める。

 自分のせいだ、と悟ったブルースは、例のビルへ。神に会い、助けを請う。
 ここの神のセリフが実にいい。

 神「ブルース。スープを二つに分けたのは奇跡じゃない。それは手品だ。仕事を持っているシングルマザーが子どもとの時間を作る。それが奇跡。ティーンエイジャーがドラッグから離れて学校へ通う。これも奇跡。人々はわたしにいろいろなことを頼る。しかしみな、自分が奇跡を起こせる力を持っている。奇跡を見たいかい? わが子よ。奇跡を起こせ(Be a miracle.)。


 ブルースは心を入れ替え、人々のために、自分ができる等身大のことで協力する。例の「神オンライン」もコンセントを抜き「ブルースは与え、ブルースは奪う」と一言。ここ、ヨブ記 1:21のパロディである。いいなぁ、こういうさりげなさ。
 エヴァンにも、自分がアンカーを退くことと祝辞を述べ、テレビ局の仕事も、今までどおり色モノリポーター≠ニして喜んで続けることにする。

 恋人のグレースが自分のためにどれだけ祈っているかを知ったブルース。高速道路でひざまづいて祈る。トラックにひかれたか、と思われた瞬間、真っ白な空間に。そしてまた神と会う。

 ここからのシークエンス。何度観てもいい。

 神「君には神の輝き(divine spark)がある。君には世界に楽しみと笑顔を与える才能がある。わたしがそう創った」
 ブルース「……自慢かよ(Quit bragging)」
 神「それだよ。それがわたしの言っているsparkだ」


 このブルースのウケが何度聞いてもいい。DVDの字幕だと――



 になっており、吹き替えだと「そうだっけ?」になっているが、やはり邦訳するなら「自慢かよ」が一番ピッタリくると思う。

「真の祈り」というものを悟ったブルースは、大怪我をしながらも現世に戻り、献血運動の会場から軽妙なリポートを送る。「Be a miracle.」の合言葉とともに。

 クリスチャンでなくても楽しめる、かるーいキリスト教入門として(そうか?)お勧めの一本。

 ちなみに、続編で、アンカーとなったエヴァンを主人公とした「エヴァン・オールマイティ」も作られているが、こちらはノアの箱舟を現代風にしたドタバタで、正直、それほど楽しい作品ではなかった。残念。
posted by 結城恭介 at 08:00| 書評・映画評