2019年01月12日

【日記】1.4秒の攻防・その1

 さて――

「あけましておめでギャー・その1」
「あけましておめでギャー・その2」
「あけましておめでギャー・その3」

 と続けてきた、昨年末に遭った交通事故の記録である。さすがに1月12日にもなって「あけまして――」はないと思うので、タイトルを変更した。
 しかし、20年くらい前までは、1月15日の成人式(固定)までは、なんとなく正月気分ではあったものだが、21世紀は時の流れも速くなった。

 話は、加害者が加入している保険会社が契約しているという、事故調査専門会社から電話がきたところから。

 相手「ドライブレコーダーの動画があるということで、後日、弊社の担当者を向かわせますので」
 わたし「その方に、動画のファイルをUSBメモリか何かに入れてお渡しすればよろしいわけですね」
 相手「いえ――。USBメモリをお預かりすると、お返ししなくてはいけなくなってしまいますので、そういうわけには。弊社の担当者のPCで再生してみて、そこでコピーさせていただいて、動画をいただく、ということになります」
 わたし「(面倒くさいなぁ。USBメモリの一個くらいくれてやるのに)はぁ……」
 相手「今日中に、というわけにはいきませんので、そうですね――○日か×日、結城さんのご都合のよろしい日はありませんか?」


 ○日も×日も、数日後である。この時の流れが速い時代に、なんというのんびりした話だろうか。

 わたし「では○日で――」
 相手「……少々お待ちください。ええと、結城さんの方でアップロードが可能でしたら、こちらから弊社のアップローダのアドレスをメールしますので、そちらにアップしていただくこともできますが」
 わたし「(できるんかーい)できますよ。もちろん」
 相手「では、テストメールをお送りさせていただきますので、メールアドレスをお教えくださいますか?」
 わたし「わかりました。ケイ、ワイ、オー――」


 こうしてメールアドレスを教えた後、電話は切れた。

 しばらく待っていると、メールが届いた

 お世話になります。
 ○○社の××です。
 テストメールをお送りさせていただきます。
 返信をよろしくお願いいたします。


 間髪を入れず、一分以内に返信を送信してやる。

 ○○社 ××様
 お世話になります。
 メール受信良好です。
 とりいそぎ、お返事まで。


 15分後に、その会社のアップローダのアドレス(もちろんパスワードつき)を記述したメールが届いたので、即アップ。そしてその旨を送信。

 ○○社 ××様
 お世話になります。
 ファイルを正常にアップロードしました。
 ファイル名は

 xxxxxxxxxx_JIKO01.mp4

 となります。
 よろしくご査収ください。
 それでは、用件のみですが、とりいそぎ。


 また15分後に返信あり。

 お世話になります。
 動画アップロード確認しました。
 迅速な対応に感謝いたします。
 遅滞なく保険会社にお届けします。


 取りあえず、このネット時代のファイル送受に、のこのこ担当者がノートPC持参でやってくるような、莫迦莫迦しいまねは避けられたようである。

 さて、問題は相手の保険会社がこの動画を見たとき、どんなことを言ってくるか、である。「あけましておめでギャー・その3」でも書いたように、こちらの停止は1.4秒の直前停止≠ナあることが焦点となるだろう。
 気分的には、加害車の怪しい動きを察知して止まったのだから、「0対10」でないと納得できない。しかし、相手は「1.4秒の直前停止=vであることをネチネチと言ってきて、「1対9」、「2対8」を言ってくるのではないか?

 そこで、対応問答集を作成することにした。

 保険会社「止まっている時間が短い」
 こちら「今、止まっているとおっしゃいましたね。すると、こちらのクルマが静止していたということはお認めになるわけですね。事故のとき静止していたのですから、こちらの過失割合はゼロを主張します」

 保険会社「ほんのわずかの時間である」
 こちら「いいですか? 加害者のクルマが時速何キロ出していたのかは知りませんが、クルマは時速5キロで、一秒で約1.4メートル進むんですよ。加害者とわたしのクルマの間が2メートル開いていたら、ほんのわずかの時間で衝突するのは当然です。そして2メートルという距離は、歩道で安全をとる距離、ドライバーが安全確認をする距離としては十分だと考えます。今回の事故は、加害者が完全に安全確認を怠ったことが100パーセントの原因です。こちらは静止するのが精いっぱいでした」

 保険会社「ほんのわずかの時間である」
 こちら「こちらでストップウオッチで計測したところ、どんなに短くとっても、こちらのクルマは一秒以上、静止していました。加害者のクルマの不審な動きを認知して、減速から完全停止するまでの時間はもっと長く、加害者が安全確認をしていれば、こちらのクルマに気がつくのは当然のことです。クルマは時速5キロで一秒で約1.4メートル進むんですよ。先ほども申し上げましたが、2メートルという距離は安全距離として十分です。今回の事故は、加害者が完全に安全確認を怠ったことが100パーセントの原因です。こちらは静止するのが精いっぱいでした」

 保険会社「前回は5秒とおっしゃいましたが?」
 こちら「それほどこちらは、その短い時間を長く感じていたということです。逆に言えば、加害者のクルマが安全確認をして静止することは十分可能な時間があったということです。今回の事故は、加害者が完全に安全確認を怠ったことが100パーセントの原因です。こちらは、そちらが言ういわゆる短い時間とはいえ、静止するのが精いっぱいでした」

 保険会社「回避できた」
 こちら「わたしのクルマは公道と歩道の間にいたんです。公道にこのままクルマの後部を出しているわけにはいかないので前方に進みました。そこで加害者のクルマが不可解な動きをしていたのでクルマを止めたのです。前方に進めば動きながら衝突、後方へは安全確認なしでバックで公道へ出るという危険な行為を犯さなければならず、わたしは静止する以外手はありませんでした。実際にドライブレコーダーを最後まで見れば、後方から新しく入ってくるクルマがあったことがわかります。わたしがバックしていたら、そのクルマにぶつけていたかもしれません。わたしはクルマを止める以外ありませんでした。事故のとき静止していたのですから、こちらの過失割合はゼロを主張します」

 こちらの反撃「ここは歩道です。わたしがクルマだから良かったものの、もし人間だったら、加害者の安全確認なしでバックするという危険な行為で、人が死んでいたかもしれないのですよ。それでも被害者に過失があったとそちらは言うのですか?」

 保険会社「あなたはクルマでしょう?」
 こちら「しかし、事故のとき静止していたのはドライブレコーダーの動画が証明しています。いわば止まっている人間と同じです。止まっている人間をバックで轢いても、そちらは被害者に過失があったと言うのですか? 今回の事故は、加害者に100パーセント、安全確認を怠るという過失があったと考えます。こちらは、事故のとき静止していたのですから、過失割合はゼロを主張します。それ以外で示談は決していたしません」


 われながら「面倒くさい被害者だなぁ」と苦笑せずにはいられないが、とにかく、過失割合「0対10」は譲れない。この線だけは死守する。もしそこを踏み越えてくるのなら、弁護士特約で調停だ。と、細君とも腹は決まっていた。

 そして、翌日の夜、相手の保険会社からの電話のベルが鳴る。
 対決は次回に!
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記