2019年03月23日

【日記】わたしは防水を信じない

 昔の電子ガジェットに、水は禁忌であった。せいぜい腕時計が「日常生活防水」を謳っているくらいで、たいていの電子機器を水しぶきにあてたり、ましてや水中にドッポンすることなどは考えられないことなのであった。

 翻って二十一世紀。世の中の「防水」についての意識はずいぶん変わったと感じる。今、わたしが身につけている腕時計は「十気圧防水」だし、フィットネストラッカーMiBand03も「つけたままプールで泳げる」防水性能を持っているという。
 さらにスマホもMILスペックで浸漬防水。もう十年選手のコンデジ、オリンパスμ1030SWなどは防水の上、落としても壊れない耐ショック性能を持っているのでいまだ現役である。

 しかし、わたしはそういうスペック上の「防水」を、まったく信じていないのであった。風呂に入るとき、防水スマホを持っていったりはしないし、シャワーを浴びるとき、MiBand3は外している。μ1030SWも水に暴露させたことは一度もない。

 つまりわたしは、「防水」を信じていないのであった。

 これは本能的なもの、あるいは強迫的な信念なので、曲げようがない。
 わたしと同じように、昭和の時代から電子ガジェットを使ってきた方なら、同じような感覚ではないか、と思っていたが、古くからの盟友たちは「え、風呂にスマホ持ち込みますよ」「遅れてますよ結城さん」と言う。どうやらわたしだけの思い込みのようだ。

 それでも、やっぱり「防水」は信じられないのである。

 その昔、個人ホームページ華やかなりし頃、ひとりの時計職人の方のサイトで、防水について語っていたコーナーがあり、それにとても説得力があったのだ。
 それは腕時計の防水についてのページだった。十気圧防水の時計と言うと、素人は十メートルの潜水に耐えると思いがちだが、実際にはそんなことはなく、水深十メートルのところで腕を振ればすぐにプラス数気圧され、耐圧防水性能を越えてしまう、というのだ。なるほど、と思ったものだ。
 その方によれば、十気圧防水の時計が実際に使えるのはせいぜい水深四、五メートル。また、数字通りの性能を期待できるのは、きちんとメンテがされている状態であり、防水シーリングが経年変化していれば、水深数十センチでも浸水の可能性があるのだという。
 さらに、「回数」の問題がある。十気圧防水の時計でも、一度水に浸してしまえば、防水シーリングは必ず劣化する。買ってからずっと変わらず「十気圧防水」を保てるわけではない。こまめなメンテ(防水シーリングの交換)をしなければ、潜るたびにどんどん性能は落ちていくのだという。

 つまり、電子ガジェットの「耐水」機能は、時間とともに自然に減っていくヒットポイントで、耐水機能を一度使うと、そのヒットポイントはさらに減ると思っていたほうがいい。そういうものなのだな――というのが、そのとき得たわたしの感想であり、以降、強迫的観念になってしまったのであった。

 実際、防水を謳っているガジェット機器でも、シャワーや風呂のお供にしていて「画面が結露した!」「動かなくなって修理にだしたら浸水していると言われた!」というレポート例を、あなたも一回くらいは読んだことがないだろうか。

 そのようなわけで、わたしは無用なトラブルを避けるため、たとえ「つけたままプールで泳げる」と謳われているMiBand3であっても、ちゃんと外してシャワーを浴びるのである。

 それはわたしだって、風呂の中でスマホを使いたい。タブレットで読書しながら長風呂できたら幸せだろうと思う。それでもやはり、怖くてできない、というのが正直なところ。

 ちなみに、もとから風呂場で使う仕様のCDプレイヤーは使っている。これも十年選手である。耐水シーリングもまだ無事で浸水したことはない。というか浴槽につけたり、シャワーをかけたりはしないよう、ていねいに使っている。
 あと、フィリップスの水で洗えるシェーバーは遠慮なく水で洗っている。
 このあたりは、「もともとそういう環境下で使うことを考えて作られているものだから、使わないと意味がない」ということで、自分の中で矛盾はない。

 %title%は、古い映画「モスクワは涙を信じない」のパクりである。これは「泣いたところで助けはこない」という意味のロシアのことわざなのである。
 お風呂にスマホを持ち込んでいる諸氏諸嬢。ディスプレイ内が結露して泣いたところで、助けはこないのですぞ。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記