2019年08月14日

【映画評】ドラゴンクエスト ユア・ストーリー(ネタバレあり)・その1

 この八月から九月は、劇場で観たい映画がたくさんあって嬉しい。

・天気の子
・アラジン
・ダンス・ウィズ・ミー
・アルキメデスの大戦
・ゴーストランドの惨劇
・ライオンキング
・かぐや様は告らせたい
・HELLO WORLD
・アド・アストラ
・空の青さを知る人よ

 このあたりは劇場で観たいなぁとチェックを入れていたのだが、ここにきてダークホースが現れた。
 チャララチャッチャッチャーン!

「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」が現れた。どうする?
 →観る
  観ない


 実はこのタイトル。はなっから観る気はなかった。好きだったドラクエVをベースにしているとのことだが、当時はそれこそ、ステータスカンストまでやりこんだとはいえ「いまさらドラクエ映画!? オワコンじゃないの?」という意識があり、観たいものリストから外していたのだ。

 それが蓋を開けてみれば、なんとSNSでも5ちゃんねるでも悪評の嵐。中には「平成のワースト映画がデビルマンなら、令和のワーストはドラクエ映画」とまで(まだ令和元年なのに)言う人も。
 シアターから出てくる人が葬式の顔。地獄を見た。それをやってはいけないオチ。クソ映画。ドラクエ愛がない。とにかくひどい。戦犯は山崎監督。エトセトラ、エトセトラ。
 わたし、こういうのに弱いんですよw そんなにひどい映画なら、劇場で観て、後々友人に「あれ、公開時に劇場で観たんですよ」と自慢したいから。

 というわけで、暑い真夏の日差しの中、細君となじみのシアターへ。小さい箱で席は埋まっていない。どうやらチビッ子たちは「ワンピース」の方へ行ってしまうらしいですな。いやしかし、この閑散ぶり、SNSの悪評というのは、今の時代、本当に効くらしい。

 全あらすじ(ねたばれいくよーッ!)

 主人公の少年リュカは、父パパスとともに修行の旅を続けていた。目的は宿敵ゲマに連れ去られた母を取り返すこと。パパスはリュカを、かつて世界の平和をもたらした「天空人」の末裔だと信じていた。

 美少女フローラとの出会い、ビアンカとの冒険、(ベビー)キラーパンサーのゲレゲレにも懐かれたり、不思議な青年にドラゴンオーブを見せびらかしたり、ヘンリー王子との邂逅などを経験し、やがて二人は宿敵ゲマに相対。しかしパパスはゲマに殺されてしまう。

 ゲマの奴隷としてヘンリー王子とともに働かされて十年。二人は策謀してゲマの配下を脱出。優しい老人プサンの手助けもあり、ヘンリー王子は故郷の城へ。リュカは母を探す旅に復帰する。

 リュカは旅の途中で、ブオーンという魔物が平和を脅かしている街サラボナへ。そこで美少女フローラと再会する。美少女フローラの父ルドマンは、ブオーンを倒すには、天空人だけが鞘を抜けるという「天空の剣」が必要だと言うが、その天空の剣はブオーンに奪われてしまっていた。

 かつての冒険の相棒、ビアンカとブオーンの居住地へ向かうリュカ。苦戦の末、ブオーンから天空の剣を取り返すが、なんとリュカはその鞘を抜くことができない。自分は天空人の末裔ではなかったのか!? 迷っている暇もなく、闘いで辛勝を収めたリュカとビアンカ。ブオーンを味方にすることに成功した。
 街に戻り、美少女フローラとの結婚に舞い上がるリュカ。しかしそこに老婆が現れ「真の心を知りたければこれを飲め」とクスリを置いていく。リュカは迷った末にそれを飲み、自分が本当に好きなのはビアンカだと気づく。
 美少女フローラの父ルドマンに美少女フローラとは結婚できないと伝えたリュカ。そして宿屋へ戻り、すったもんだの末にビアンカに求婚。二人は結婚することになる。
 宿屋を出るところで、昨夜の老婆に出会い、礼を言うリュカ。二人が去ったあと、老婆は変身を解く。なんと彼女は美少女フローラであった。美少女フローラは、リュカの本当の気持ちが自分にないことに気づき、ひと芝居打ったのである(なお、筆者はフローラ派である(怒))。

 パパスとの居住地に戻り、従者サンチョとも再び邂逅。ビアンカは懐妊し、二人の間に、一子アルスが誕生した。

 話は進み、ゲレゲレとの再会なども経て、宿敵ゲマとついに闘うリュカとビアンカ。しかしゲマの圧倒的な力によって二人は組み伏せられ、リュカは石化させられてしまう。ゲマはビアンカが「なにかと違う」ことに気づき、彼女をさらい、すべての悪の元凶「ミルドラース」の城へと連れていく。
 そこにはリュカの母マーサが、心を閉ざしたまま球形バリアの中いた。ゲマは、実はビアンカこそ「天空人」の末裔であり、マーサと会話し、魔界の門を開けミルドラースを呼び出せ、と命令する。
 マーサとテレパシーで話すビアンカ。しかしマーサは「今回は今までと違うのです」と意味深な言葉を言い、魔界の門を開ける呪文は教えず、怒ったゲマはビアンカをも石化したのであった。

 リュカの石化が解かれたのは、なんと十年(たぶん)もあと、やりとげたのは息子アルスであった。アルスは元気な少年としてサンチョのもとで成長し、父リュカの石化を解く冒険をしていたのだ。
 そこで魔物と相対するアルス、リュカはこれを使え、と間違って「天空の剣」を投げ渡してしまう。するとアルスはその剣の鞘を抜き、魔物を一刀両断してしまった。アルスこそ「天空人」の末裔だったのだ(ま、ビアンカがそうだからね)。

 二人はゲマと闘うために、竜が人の姿を借りているという話がある街へ。そこで以前ヘンリー王子とリュカを助けた優しい老人プサンと出会い、彼こそが竜であることを知る。しかし、ドラゴンオーブがないので竜に戻れないとのこと。リュカが持っていたドラゴンオーブは偽物だったのだ。

 ここは妖精の力を借りる一手だな、というプサンの助言に従って、スライムのスラリンを伴って妖精の国へ行くリュカ。そこで艱難辛苦を乗り越え、妖精の力を借りて、過去の自分に会いに行くことに。そう、子どもの頃、ドラゴンオーブを見せびらかした不思議な青年は、自分自身だったのだ。
 ドラゴンオーブをすり替え、今の時間に戻るリュカ。プサンは竜として復活し、ゲマの待つミルドラースの城へと向かう。
 アルスは母リュカの石化を解き、闘いは開始された。だが多勢に無勢。大勢の魔物に囲まれ旗色が悪い彼らに、突然、力強い味方が現れた。ブオーンと、ヘンリー王子の戦闘部隊であった。彼らに後衛を任せゲマを追い込んだリュカとビアンカ、そしてアルス。
 しかしゲマは、リュカの母マーサの力を利用して、自らを崩壊させながらも、ミルドラースを復活させてしまった。
 魔界の門を封じるには、天空人の末裔が、「天空の剣」を使うしかない。
 ブオーンに投げられ、天空の剣を掲げ、天高く飛ぶアルス。ミルドラースはついに倒された――

 と、リュカの周りの時間が止まった。そこは不思議な空間であった。すべてのものが静止した空間の中で、ミルドラースがついに姿を現す。
「わたしはミルドラースに化身したウイルス。この世界が嫌いなものに仕掛けられた存在だ。君がいるのはバーチャル世界のドラゴンクエストワールドに過ぎない」
 ミルドラースが「テクスチャオフ!」と唱えると、リュカの周りの世界が真っ白に、「グラビティオフ!」、「コリジョンオフ!」次々とゲーム世界のリアルが崩れていく。

「リュカ」はそこでやっと思い出した。これは確かにバーチャルゲームの中だったと。自分は「リュカ」などではない。ドラゴンクエスト好きの名もない青年。街のバーチャルゲーム屋で「ぼく、いっつもビアンカ選んじゃうんですよねー」などと軽口を叩くような、ただの青年だった、と。
 今回のゲームの少年時代が短かったのも、そのとき「少年時代:スキップ」を選んでいたから。またビアンカを即選ばなかったのも、「選択:フローラ」にしていたからだと。

 茫然とする「リュカ」に、ミルドラースの名を借りたウイルスは勝ち誇ったように言う。

「早くオトナになれ!」

「リュカ」はハッとする。「それでも、ゲームの中であっても、ぼくにとっては、大事な現実なんだ!」
 正面からウイルスに立ち向かうリュカ。そこに現れたのは、ゲームの最初から主人公に付き添っていた、あのスライム「スラリン」であった。
「ぼくは君を最初から見守っていたワクチンだ。これを使って!」スラリンの背から「天空の剣」が出てくる。
 リュカはその剣でウイルスを突き刺し、ゲーム世界は再び、リアルなものとなって復活した。

 丘の上を走るアルス。それにビアンカ、ゲレゲレ。このドラクエ世界の平和よ、永遠に――

  Continue your adventure.


 ちなみに筆者は本作を一回しか観ておらず、それも三日前のことなので、詳細などは違っている可能性大であるが、ま、流れとオチ、ということでご了承を。

 しかしなっが! なっがいですな。これを103分の尺に納めたものだから、子どもなどは途中、ストーリーを追えなくて飽きてしまったのではないだろうか。ま、いなかったですけどね、チビッ子たち。
 しかし、ストーリーテリングとしては悪くない。伏線はすべて作中で回収し、きれいな構造体として形をなしている。この世界がゲーム世界だ、というのも、唐突に出てきたものではない。途中、マーサが「今回は違う」と言っているのがその伏線だ。

 で、世間の悪評ぷんぷんは、ラスト部分。このドラゴンクエスト世界がバーチャルリアリティであり、今までのストーリーがすべて「創られたもの」であった、というところに集中している。つまりこれね。


(「トータル・リコール」より引用。マトリックスというよりはこっちのイメージだろう)

 ちなみに細君の感想は「フローラを選ばなかったのは許せない」だそうだ(ウチはそろってフローラ派)。

 この記事もあまりに長くなったので、なつよ、次回に続こう。
posted by 結城恭介 at 08:00| 書評・映画評

2019年08月10日

【日記】仕事のご健闘を祈り致します。

 というメールが来たので大公開。
 特に感想は書かずに、この味わいをかみしめていただきたく。読みやすいよう改行はいれたがすべて原文ママである。

Subject:仕事のご健闘を祈り致します。

仕事のご健闘を祈り致します。

私は某探偵社の調査員と申します。お客様に頼まれ、貴方のことが全面追跡調査を行います。仕事中で貴方が身分があるであることを見つけました。それで貴方が人知れずの一面を了解しました。私にとっていい見つけると思います!

もし私はこの材料を公開したら、絶対貴方にとって悪い影響があります。

もしこの資料を貴方に渡したら、私達にとっていいじゃないの。

お客様と社長さんは私に「貴方が貴方の家族はとても大切」だと言いました。

貴方は私の要求を満足すればいいんだよ。もちろん、貴方は警察に連絡してもいいんです。でもね、私のノートに貴方の電話と住所を全部書いていますよ。

私の指示を操作しないと全部のことをご家族にお知らせしますよ。チャンスは一回しかない、手紙が二度来ないから。

24時間以内に2個つのビットコインを支払ってください
(Bitcoinウォレットアドレス:xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx)

Bitcoinをもらってから 私達は世間で知り合ったことを忘れている、これから貴方は何にも危険が無いです。すべて悪い物を隠滅します。

覚えてね、まぐれ心を持ってないでくださいね、チャンスは一回しかないよ。
ご家族の幸せを祈ります!


 爆笑したあとで、いやぁ、日本語って本当にいいなぁとしんみりしてしまうメールでした。
 この余韻を残して、短めだけれど今日はおしまい。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記

2019年08月07日

【日記】イケアにみる印象と実際

 もう10年以上も前になる。私の住んでいる地方都市からちょっと離れたところに、北欧家具の店「イケア」ができたのであった。
 特に家具を買う用事はなかったが、大きなショッピングモールも近いこともあり、その帰りに寄ってみたのである。

 なんとなく、北欧家具店ということで、根拠はなにもなのだが、品質も良く、古いものを大事に大切に使っていく、というような、そんなイメージがあった。
 通して見ていって、洒落た感じの家具が多いのが気に入った。
 日本での対抗店はニトリよりも無印良品という感じがした。なにより、デザインがシンプルでいい。
 いい感じのウォールランプがあったので、書斎での読書用にひとつ購入。家に帰って壁面につけてみると、なかなか具合が良い。


(こんな製品。左右のロッドの長さを調節したり、電灯部分を壁に向けて間接光にできる)

 ブログに載せているいろいろな写真からおわかりいただける方も多いかもしれないが、わたしは「めちゃくちゃ明るい室内」が苦手である。室内の灯りは間接光がよい。このあたり、イケアのウォールランプは「さすが北欧」という感じで良かった。いや、北欧だからということになんの根拠もないのだが、高緯度のイメージでね、あくまでイメージ。

 このウォールランプが、ある日を境に点灯しなくなってしまった。球切れだろうとIKEAへ行って、同じ型番のものを買って交換してみる。これで解決、と思ったら、あら、点かない。よく調べてみたら、なんと付属の変圧器の方が故障していた。


(換えの電球自体はIKEAでもまだ扱っていた。IKEAロゴがおわかりいただけるだろう。今はもうないかも。とはいえこれは規格品だからIKEA以外でも買える製品)

 ムダになってしまった買い物にガックリしながらも、ウォールライト自体はけっこうお気に入りのデザインであるし、イケアは北欧家具の店であるということから、そう廃版などすることもなく同じ製品を売り続けているだろう、修理もできるだろうと思い(イメージ先行。根拠なし)、問い合わせてみると――

「申しわけありませんが、弊社では修理サービスはいたしておらず、変圧器などのパーツのみ販売については行ってない状況でございます。該当のライトは廃番となっております。なにとぞご理解うけたまわりますようお願い申しあげます。これからもニケアをよろしくお願いいたします」

「がーんだな……」
 いや、ショックだったのは、ウォールランプがもう直せないからというより、わたしが勝手に持っていた「イケアは北欧家具の店だから、古いものを大切に使っていく品質もいい製品を出している」というイメージが、根底から覆されてしまったことであった。
 それまで興味がなかったので検索することなどなかっったのだが「イケア 品質」で検索してみると、あらら、あら、ふーん、そうか、そうなのか。

 北欧家具の店、ということで、勝手なイメージを持っていたわたしが悪かったのである。

 これでイケアと縁を切ったかというとそうでもなく、別のウォールランプを二種類購入したり、別の買い物をして、それが不良品で交換などもしている。
「そういう店」だと最初から思ってつきあえば、特段、腹をたてることもない。ウォールランプも「壊れたら修理はできない製品」と納得の上で使っている。

 その昔、わたしはソニー党であった。テレビ、ビデオ、レーザーディスクはもちろん、オーディオ関係や電話機、そのアクセサリまで、全部ソニーで揃えていた。
 今では誰でも「ソニータイマー」という言葉を知っているくらいだが、確かにソニー製品は一年を越えると良く壊れた。昔は街にソニーサービスの事務所があったので、数ヶ月に一回はなにかを持ち込んでいたものだ。

 そんなに故障ばかりするソニーのなにが好きだったのかというと、デザインなのであった。家電家電した他社のそれと違い、ソニーのそれはわりとシンプルで、多機能ではあってもそれを感じさせない美しさがあった。
 今は、ソニーが変わったのか、自分の感性が変わったのか、ソニー製品をそれほど美しいとは思わない。
 今はソニー製品をほとんど持っていないことは、以前「【昭和の遺伝子】VAIOのMPEGはなぜ駄目だったか」に記した。

 デザインに定評があると言えばアップル社の製品だが、これも自分は、アップルIIの頃から美しいと思ったことがない。どうもアップル社の製品のデザインと自分の感性は性が合わないらしい。
 実はマッキントッシュII Siを持っていた時代もあったが、OS的にも、あの「中身がブラックボックス」的な感じがイヤでメインで使うことは一度もなかった。


(書斎の隅に放置されていたマッキントッシュII Si。自分でもこの記事を書くまで、持っていたことを忘れていた)

 わたしのプログラマ、エンジニア仲間で「マックが好き」と本心から言っている人は一人もいない。これが類友なのか、(本当の意味の)ハッカー連中の本心なのか。まあそれは触れないでおこう。

 モノにつけ人につけ、持っていた印象と実際が違うことなど、珍しくもないことである。
 イケアはイメージ戦略がうまくいった例だと思う。実際の品質は良いとは言えないのに、わたしのような「それでもいいや」という顧客を得ることに成功している。

 ソニーはイメージ戦略はうまくいっていたが、実際の品質の悪さに顧客を手放した例として、アップルは(極めて個人的にだが)イメージ戦略に落とされなかった例としてあげてみた。
 こういうのも人それぞれだろう。だからこそ世界はおもしろいし、うまく回っている。

 わたしが細君に持っていた最初の印象も、実際とは違っていた。
 これはそのうち、別記事で触れよう。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記

2019年08月03日

【日記】本物のお巡りさんを詐欺師扱いしてしまった話

 ある日のこと。実家に帰ってみると、老父が「これから警察がくるから」という。
 話を聞いてみると、なんでも、オレオレ詐欺の亜流の特殊詐欺電話がかかってきて、その件で警察に連絡したので、調書を取りに警官がくるというのだ。

 詐欺電話の概要はこんな感じだったらしい。

 詐欺師「こちら、○○中央警察署生活安全課の××ともうしますが、通帳を落としませんでしたか?」
 ふつう、通帳など持ち歩かないものだが、おり悪く――本当にタイミングというものがあるものだ――父は昨日、通帳を持って街にでていたのだという。
 それで父は少しあわててしまい、通帳が手元にあることを確認し、そこで老母と電話を代わったという。
 詐欺師「ほかにも通帳はありませんか? 実は、先日、特殊詐欺のグループが捕まりまして、そこにあった六十四の通帳の中に、結城(父)さんの通帳があったんですよ」
 母「(怪しいと踏みつつ)通帳なら全部ありますよ」
 そこで押し問答のような感じになり、詐欺師は――
「こちらにご来署いただいてですね、ご確認いただきたいんです」
 と、なぜか家から外に誘導しようとする。
 母はしっかりきっぱりしているので――
「嫌ですよ。雨が降っているのに。○○中央警察署の電話番号はなんですか? あとでこちらから折り返し電話します」
 詐欺師「xxx-xxx-0110です」
 母「じゃああとでかけ直します(チン)」
 ちなみに、詐欺師からの電話は非通知であった。

 そして警察(110番)に電話したら、警官が調書を取りに来るという。そして最初のくだりになるというわけ。
 これは自分もついていた方がいいな、ということで、待つこと十数分。カッパを来た重装備のお巡りさんが玄関チャイムを鳴らしてきた。わたしがインターホンに出て、思わずモニター越しに(ちょっと冗談めかして)「本物ですよね?」と一言言うと、お巡りさんはとてもまじめな顔で「もちろんです」。
 ドアチェーンを開けて玄関へ通すと、カッパを脱いで、丁寧に警察手帳を見せてくれた。

 実家の電話機はダイニングにあるので、そちらへお通しして、調書取りが始まる。だいたい、上記のようなことを説明して――と、そのとき、電話が鳴ったのである。

 顔を見合わせる警官とわたしら家族。これは? ひょっとして?

 わたしが取ると――
 ?「結城さんのお宅ですか?」
 わたし「どちらさまですか?」
 ?「○○中央警察署の△△ともうします」

 こ、これは、詐欺師再びキターッ? 横にいる警官に聞こえるよう、わたしは復唱する。
 わたし「○○中央警察署の△△さんですね」
 横の警官の肩についた無線機がコールを寄越してきたので、彼はサッとそれを手で覆った。わたしもとりあえず芝居を続ける。
 ?「それでですね。さっきの電話ですが、あれは全部、相手の嘘ですから」
 わたし「えっ、さっきの電話は、全部嘘なんですか?」
 ?「はい、そうです。それでですね――」
 ここからの会話が、どうも噛み合わない。こちらは相手を詐欺師と決めつけて、横にいる警官にわかるよう話すのだが、なかなか用件に入ってこないのだ。
「この電話、スピーカホンにできますか?」と、横の警官がささやくので、いよいよ勝負か? とスピーカホンのスイッチを入れる。と――。
 警官「もしもし。こちら○○署の☆☆です。すでに現着しております」
 ?「もしもし。ああ、そうでしたか。それではよろしくおねがいします」

 え? ええー? えええーっ?

 なんと、電話の相手は、本物の○○署の警察官だったのだ。どうも横の警官が無線で署の方に現着を伝える前に、本物の警官が心配してこちらに電話してきたらしいのだ。
 なんとわたしは、本物のお巡りさんを、詐欺師扱いしてしまったのである。
 ガックリしてへたりこむわたし。苦笑する老父母。警官がまじめな顔で、一笑もせず――
「そのくらいの警戒心があった方が、わたしどもの方も助かりますよ」
 と、言ってくれたのが幸い。

 ちなみに、詐欺師が言った番号、xxx-xxx-0110は、○○中央署どころか、ぜんぜん違う病院のそれだった。どうやら最後の0110がそれっぽいのででたらめを言ったようだ。

 というわけで、我が実家の特殊電話詐欺騒動はおしまいである。その後、特になにも悪いことは起こっていない。
 ただ不気味なのは、この詐欺師が、通帳をおとりに、父母を家からおびき出そうと躍起になっていた、という点である。これは新手で聞いたことがある、電話で巧みに相手を誘導し留守にさせ、その間に空き巣に入るという手法の詐欺・窃盗犯グループだったのかもしれない。

 くわばらくわばら。
 特殊詐欺グループも、次から次へと新手の手法を編み出してくるが、粗暴犯になりかねない空き巣、強盗のたぐいは恐ろしい。
 皆さまもお気をつけて――。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記