2019年08月17日

【映画評】ドラゴンクエスト ユア・ストーリー(ネタバレあり)・その2

 の続き。前回はほぼあらすじだけで終わってしまった。

 世間の評では、ラストの「あまりの蛇足さ」に、監督らが独自色を入れたいがための自涜行為だと言われている。ひょっとしたら――

 坂場「うーん、ダメですね。これではただのドラクエになってしまう。わたしは納得いきません」
 下山「では、このストーリー全体がゲームだった、というのはどうでしょうね」
 神地「おもしろい!」
 なつ「ええー……」
 仲「それはね、いい視点だと思うよ」
 坂場「主人公は、バーチャルリアリティでこの映画のゲーム世界を楽しんでいるんですよ。最後にそれに気づかされて、本当の敵に出会う」
 神地「おもしろい!」
 なつ「ええー……」
 坂場「本当の敵というのは、ウイルスで、実はずっと一緒にいたスラリンがワクチンだった、というのはどうですか?」
 神地「おもしろい!」
 なつ「ええー……」


 などという会話が交わされていたのかもしれない。後々のために書いておくと、これは今、NHKの朝ドラでやっている「なつぞら」のパロディである。

 さて、多くの「反ドラクエ ユア・ストーリー派」を敵に回してしまうかもしれないが、わたしは、だいたいのネタバレを知りつつ観ていたので、この結末、うーん、そう悪くはないんではないの? と思ってしまったのだ。

 最近は歳を取ったので、感想を言語化するのに時間がかかってしまうのだが、帰りに寄ったファミレスで細君と話しながら、どうやら心がまとまった。

「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」は、宣伝方法を間違えたのである。

 わたしはもう人生半分終わったオトナである。その昔、リアルタイムにドラクエにハマった経験もあるが、今となっては「え、ドラクエ? そんなもんオワコンでしょ?」と思っている。ゲームはもう全然しない。まともなオトナはね、仕事が忙しくて、ゲームになんてハマってる時間はないんですよ。だから公園にたむろするポケモンGO勢に、内心「早くオトナになれ」と毒づいている。そんな層。

 そういう層に向けて、この「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」は作られているのだ。
 観終わったあと「そうだ、そうだよな。あのドラクエを遊んだ時間は、本当に冒険だったんだ」と郷愁を感じさせ、ゲームにハマっているオトナたちに対し「まあそれもいいんじゃない?」と思わせる。そんな映画だったのだ。

 つまり、本作は、はなっから、「ドラクエ好き好き」クラスタに向けて作られた映画ではないのである。
 宣伝で、たとえば「ドラクエを忘れたオトナたちに」とか。「ドラクエはオワコンではなかった!」とか「感動を失ったかつての勇者たちへ――」とか謳えば――うーん、それでもやっぱり、悪評は出てきただろうな。

 なにしろ、わたしがこの作品を見に行った理由が「悪評がおもしろそうだったから」である。最初っから、観劇リストから除外されていたのだ。だって、ドラクエなんてオワコンだと思っていたから。
 わたしのようなひねくれ者でもなければ、そんな層がいまさら「ドラクエ」の映画なんて観るわけがない。

 わたしは本作を佳作とは言わない。しかし駄作ではないだろう。あのラストを含めて良作くらいには感じる。

 不満点があるとすれば、主人公が「ただの青年」とわかるシーケンス(街のVR屋で云々のところ)は実写にすべきだったと思う。そこまでやってくれれば――もっと悪評はひどくなるだろうと思うが――わたしは手を叩いて、やってくれたな山崎監督! と、心中、快哉を叫んだろう。


(宇宙戦艦ヤマト24話「死闘!神よ、ガミラスのために泣け!!」より引用。「やりおったなヤマザキ^h^hトめ」のシーン)

 真面目に製作側の肩を持つとすると、「早くオトナになれ」というのは、なんらかのクリエイションを志し、努力してきたものに、世間が言う呪いの言葉なのである。
 映画監督でも、脚本家でも、小説家でも、マンガ家でも、「その職業につきたい」と言うと、必ず世間は「早くオトナになれ」と言ってくる。
 その言葉を発した「ミルドラース」という名の世間を倒す、というこのお話は、決して製作陣がふざけて創ったわけではないし、むしろ真摯にクリエイターを志したり、またくじけそうなクリエイターを励ますいいシーンだと思うのだ。

「早くオトナになれ」というのは、それだけパワーワードであるし、呪詛の言葉でもあるのだ。
 観劇者が、この言葉にグサリときて反発を覚えてしまったのは、監督を始め製作者側の誤算だったのではないだろうか。

 あとね、作中、これは腹が立った。許しがたい蛮行である。本作を――世間の評よりは――評価している筆者だが、これだけははっきり意見表明しておきたい。

 花嫁はフローラ!!
posted by 結城恭介 at 08:00| 書評・映画評