2019年11月06日

【日記】法人はパーフェクトパーソンであるということ

 これは、わたしが会社を作ったとき、法人会の先輩に言われたことなのだが、法人というものは、法によって成立が約束された一人の人格であり、それは「パーフェクトパーソン」――つまり完全な人格を当然のように期待される存在だ、ということだった。

 つまり、普通の人間のように「忘れちゃった」、「知らなかった」、「あとでやろうと思ってた」、「ずぼらでしたごめんなさい(テヘペロ)」が許されない存在が「法人」なのである。

 この記事がアップされる頃は、もう旧聞になってしまっているかもしれないが(ネットの時間経過も速いが、マスコミが事件に飽きるのも速いことよ)、タレントであるチュートリアルの徳井さんという方が、ずさんな会社経営をしていて、東京国税庁に追徴課税を受けた、という。
 三月末決算の会社で、徳井さんお一人が役員の一人会社とのこと。
 だが、その運営内容を聞くと、これは確かに、ちょっと信じられないという放置ぶりである。

 ここで、これから商業法人を作ろう、と考えている方のために、商業法人を作るとどんなことが求められるかを、主に税務署との関わりを通して記してみよう(ただしわたしの地方の場合で、別の地域の場合、違うことも多いかもしれない)。零細企業〜小規模会社の、三月決算の会社の場合のスケジュールだ。

 まず、全体を俯瞰すると、会社を設立した初年度には「新設法人説明会」というものがある。ここで法人会に誘われて入会したり。法人会には入っておくに越したことはない。いろいろと税金に関する情報が得られるから。
 そして毎月10日までに、その前月に徴収した源泉所得税を納付しなければいけない。が、徳井さんの場合は役員一人なので「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を出していると思われ(たぶん)、これをしておけば、半年ごと、1月20日、7月10日までに納付すればよい。

 一月――「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」をしていたら、20日までに納付。これは以前は10日までだったが、いつの間にか20日までに延長されていた。
 また、月末までに「法定調書」の提出がある。これは税務署と市役所、区役所宛てにそれぞれ書類を作成して提出。

 二月から三月――この月は個人の確定申告がある。この確定申告をして個人事業者は住民税額が決まる。徳井さんはこれもしていなかったとのこと。15日までに所得税を納付。月末までに消費税を納付。
 三月は多くの会社が決算月でもある。棚卸をして期末商品・製品棚卸高を確定(徳井さんの場合、棚卸はなくてもよさそうだ)。この月締めで決算をして、会計ソフトは年度を入れ換える。
 三月決算の会社の場合、その期の法人税、法人市民税(均等割含)、法人県民税(均等割含)は二ヶ月後の五月末までに納付しなければならない。
 毎年、税金関係の法改正があるので、三月中に「決算期別法人説明会」が開かれるのでそれに出席してチェック。

 四月――まずは「決算報告書」づくりである。これらがすべての税務書類の基本となるからだ。
 決算が終わったら、株式会社の場合は遅滞なく「決算公告」を行う。これは実はやっていない会社が多いが、やらないと科料も払わなくてはいけない犯罪である。取り締まられたら震えあがる会社は多いはず。おそらく徳井さんもブッチしていたことだろう。でなければマスコミが徳井さんの会社のそういったデータを公表しているだろうから。
 一人会社の徳井さんの場合、株主総会・役員会議は無縁でヨシ。

 五月――決算報告書をもとに、国税、県税、市税の書類を作成。税金の納付額を確定する。また、税務署用に「法人事業概況説明書」を作成。これが地味に面倒。
 そして五月末までに、上記の税金を銀行などに納付。なお、国税が赤字の場合、納める法人税はゼロだが、法人県民税均等割、法人市民税均等割は納付しなければならない。
 同時期に法人会の会費と、自動車税の納付もあるから、けっこうおサイフ的には痛い月。
 よく、「あの大会社が法人税を納めていないとは」と拳を振り上げる人がいるが、収益を法人税や社内剰余金に回さず、従業員の賞与などに反映させる会社のほうが、(従業員にとっては)よほど「ホワイト企業」なのである。このあたりの法人経理の仕組みは、知らない人は本当に知らない。ま、「社員」と「従業員」の区別がついていない人が大抵だからね。

 六月――法人確定申告を終えて、ホッと一息。

 七月――上記で「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」をしていたら、10日までに納付。

 八月から十月――会社が一番、税務署との関わりで無縁でいられる時期。徳井さんも自由を満喫できた、かな?

 十一月――年末調整に向けて「年末調整説明会」。

 十二月、年末調整。ま、このあたりはひとり会社の徳井さんには無縁だろう。

 とまあ、一年を通すとこんな感じ。他に年金と健康保険関係があるが、それは省略。

 そして、株式会社の場合、二年〜十年ごとに役員の任期改選があり、法務局へ登記しなくてはならない(定款による)。徳井さんの会社は2009年創業だそうだから、ひょっとしたら今年がそれだったかも。ま、これもブッチでしょうねぇ。

 なんとも面倒だな、と感じた方も、こんなもんか? と感じた方もいらっしゃると思う。が、実際、小さい会社の場合、リソースの四分の一から三分の一は、こういったこと(会社経理)に係わっていると言ってもいいくらいだ。

 徳井さんの場合、稼いでいるのだから、一人、経理の人間を雇って、あとは税理士に任せれば良かったのだ。
 それにしても、個人の確定申告すらブッチしていたというのは、社会人としても信じられないことだ。納税意識というものが欠如しているコドモと言われてしまっても仕方がない。

 冒頭にも書いたが、法人は「パーフェクト・パーソン」であることが求められるのだ。徳井さんの言い訳である「ルーズですみません」で済む話ではないのだ。

 今はタレント活動を自粛なさっているそうだが、タレントとしての才能はおありなのだろうから(ごめんなさい。良く知らないのです)、追徴課税を納めたら、会社は解散なさって、サラリーは源泉徴収済のものを吉本興業からいただくようにしたほうが、徳井さんのご本人のためにも、またイメージ的にも良いのではないかと思われる。

 世の中の、個人確定申告すらしたことがないというサラリーマン諸氏諸嬢、あなたがたは、ある意味、面倒なことを会社任せにできて幸せなのですよ。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記