2016年08月14日

【回想録】深夜のお茶会の思い出・その13

「東芝問題」と言うと、現代では粉飾決裁の方になってしまうのだろうが、一時期、ネットで「東芝問題」と言えば「東芝クレーマー問題」と決まっていたのである。
まあ、この事件をリアルタイムで知っている人も、だいぶ少なくなったろうが。

この事件、東芝のビデオデッキの技術的問題に関して、対応部署に何度も改善要求を出したユーザーが、東芝側担当者から「クレーム常習者」という扱いを受け「あんたみたいのをクレーマーっちゅうの。切りますよ」という名言を残して、電話を一方的に切られたという出来事である。

この録音を、まだ黎明期のインターネットでこのユーザーが公開したことで、今で言う「炎上」が起こった。なにより、東芝側担当者の物の言いぐさがひどかったからだ。

この東芝側担当者の一言が独り立ちして「クレーマー」という言葉が使われるようになったのである。東芝側担当者のこのオッサン、歴史に残る名言を残した偉大なオッサンなのである。

ところで、このときネットユーザーを怒らせた対応をしたオッサンの肝心のこの音源は、まだネットで拾うことができるのだろうか。当時はいろいろ編集されて、ラップ調mp3とかもあって爆笑した覚えがある。

数年前くらいまでは、一度、ネットに放流されたデータはもう二度と回収できず、ネットの海に漂い続けるといういわば定説があったわけだが、これもネットがさすがにこれだけ広大で深遠になってしまうと、だいぶ怪しくなってきてはいまいか。

我々が「ネットは情報が残る」と言っていたのは、浅瀬でチャプチャプのお遊び程度の話で、本当のネットの海の広さ深さはその程度ではなかったのかもしれない。

とは言え、わたしのHDDには当時の東芝のオッサンの音源と、それを元にしたラップ調mp3は確かに残っているので、放流しようと思えばできるのではある。しないけど。

結局のところ、ネットが広大でかつ深遠になったことに加え、なおかつそれでも実は匿名性を保ったまま情報を流せる可能性は決して低くはないという相乗効果で、「ネットの海に放流した情報は漂い続ける」というお話しそのものが、今、都市伝説化しつつあるのだと思う。Torにishで流すという手ならどうだろう(こら)。

さて、書きたかったのは東芝クレーマー問題についてではない。「深夜のお茶会」にもクレームがあったなぁ、という思い出をボチボチ記憶の底からアクセスしていたら、東芝クレーマー問題について、こんなに長く話してしまったという導入部。

いやそれは、長くサイトを開いていれば、クレームのひとつやふたつ、十や二十も来ることはあるでしょう。もっともな指摘のことあれば理不尽なそれのこともある。

今回思い出したのは二つ。両方とも、明らかにわたしの方に落ち度があったなあ、という反省があるからこそ、記憶に残っているのである。

ひとつ目は、前回の「VAIOのMPEGはダメダメ」の本記事を載せたときのことである。
わたしはソニーのサポートへの内心の怒りを表すために、筆の流れで次のように書いてしまったのだ(原文通りではなく、記憶によるもの)。

それにしても、いつからメーカーのサポートは客をなだめるだけの接客業に堕してしまったのか。嘆かわしい。メーカーのサポートに接客術などは必要ない。ただ、ユーザーの疑問に的確に答えられる知識量さえあればよい。


これに、接客業の方から「こういう書き方は不愉快です」と指摘がきた。もっともなことだ。「堕して」は怒りにまかせて書きすぎた。反省。
文脈から読めば、もちろん、わたしが接客業を何かの下に見ているわけではないことはおわかりいただけると思う。

実際、昔のメーカーのサポート、特に小さいところなどは技術者がそのままサポートもやっていて――
「お宅が今度出すPCI用のあのボードですけど、95用のドライバだしますかね?」
「もちろん出しますよ」
「OSR2も大丈夫?」
「いけます。期待してくださいね」
みたいな感じだったのである。

こういう、技術屋同士のツーカーなサポートが「常識」だったから、知識もないくせにただ相手を煙に巻こうとするソニーのサポートが「おまえら技術屋じゃなくて接客業なのかよ!」というわたしの怒りに火を注いだわけだ。

わたしは技術サポート部門を「接客業」とは考えていなかった。なので、あの手この手でわたしに非があるとするソニーのサポートに対し、ヨブ記のエリフのごとく「正しいことを言っていない」と怒ったのである。
同時にわたしは、神よりも自分が正しいと主張するヨブでもあった。正しくは、ソニーのサポートはこのときすでにすでに「技術屋」ではなく「接客業」だったのである。

しかし、今、思うのだが、当時のソニーのサポートは、「接客業」としてもよいものとは思えないのだがいかがだろうか。自分の知識(だかマニュアルだか)で手に負えない知識量を必要とするクレームがきたら「上の部署に伝えておきます」。それを約束するのが正しい「接客業」なのでは?

「深夜のお茶会」にいただいた「接客業に堕した」が不快であるというご指摘は、意固地なヨブであったわたしに対するエリフのお叱りなのだと思っている。

ちなみにヨブはウツの地の出身。関係ないけどね。
長くなったので、続きは「その14」で。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録