2017年08月27日

【回想録】写ルンです

 iPhoneでコンデジよりいい写真が取れるというこの時代、ふんわり系女子に、いにしえの「写ルンです」が人気なのだとか。あのレトロ感がいいのだそうである。
 写真が撮れるスマホがあればいいじゃん。と思うわたしには、その感覚はちょっと理解できない。

 そんなわたしだが「写ルンです」にはずいぶんお世話になった。「写ルンです」は正確には「レンズ付きフィルム」であり、カメラそのものではない。現像は写真屋に持っていって、フィルムと紙焼きをいただき、外箱はそのまま回収される仕組みである。

 この「写ルンです」の革命的なところは、「レンズつきフィルム」であり、カメラが精密機器であることを忘れさせてくれるところだった。
 良く持っていったのはスキー場。ポケットに入れておいて、いいところでパシッと撮れる。転んでもそう簡単には壊れない。
 あとは、出先でいきなり写真をとりたいときに、キオスクやコンビニですぐに買えて使えたのが良かった。
 将来の細君にちょっと落ち込む出来事があったとき、クルマで飛んでいって、もう閉園間近のディズニーランドへ連れて行ったことがあった。そのとき、わたしは細君にプロポーズをしたのである。
 そして記念に、売店で「写ルンです」を買って、キャストに撮ってもらった。
 こういうことは「写ルンです」登場前にはできなかったことだ。

 交際中はマメに現像に出していた「写ルンです」を始めとする写真フィルムだったが、結婚式後の新婚旅行から、いきなりわたしは自分の本性をあらわし始める。もともとわたし、すごく現像無精だったのである。
 交際中は、デートの写真を現像して見せることで話題が広がったので、フィルム一本撮ったらすぐに現像へ回していたが、新婚旅行で撮った写真は、なんと、なんと、なんと、20年近くもそのまま放置というていたらく。

 細君がまたそういうことに文句を言わない(気づかない)人なので「いつかは現像しないとね」「もう真っ黒になってんじゃない?」などという恐い会話を何度か繰り返しても、カメラ屋へ持っていくことがなかったのであった。

 そして時代はデジカメの時代となり、現像されなかったフィルムはずーっと箱にしまいっぱなしであった。
 ミレニアムを越え、新しい一眼レフデジカメを買おうかどうか迷ったわたしは、ひとつの賭けに出た。昔撮った、このパトローネに入ったフィルム7本分、168枚の写真が、もし、現像できたら、神さまに感謝して新しいカメラを買おう、と。


(「写ルンです」も分解してパトローネだけ保存していました)

 ヨドバシカメラに持っていって、現像は普通にやってもらい、どうせデジタル化するのだからと紙焼きにはせず、フォトCDにして納品してもらった。
 結果――



 写ってる! のである。色は褪せているが、当時、シャッターを押してフィルムに焼き付けた情景が、確かに残っている。
 色は緑色へ偏向しているが、解像度はそれほど落ちていない。むしろそれが、懐かしさをかもしだして、どこか良い。
 自分の現像無精を棚にあげて「写真って、やっぱりいいなぁ」と思ってしまった。


(ここはどこでしょう?)


(「もう二度とくるんじゃないぞ」。いやもう一度、いってみたいなあ)

 ごらんの通り、えらく退色しているが、それでもちゃんと写真である。むしろこの退色具合が「レトロでいい!」

 かといって、いまさらわたしが銀塩写真に戻るかというと、そんなことはない。この程度の効果、デジカメで撮ってPhotoShopでできてしまう。もうフィルムに戻るなんてありえない。
 なんというか、ウォシュレットの時代に、レトロで素敵だから汲み取り式のトイレがいいの、という感性は、わたしにはないのである。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録