2017年09月29日

【日記】洋式トイレ、上げてからするか? 下げてからするか?(※小)

「【映画評】打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」の追記で予告していた記事である。
 意識高い系男子のわたしはこの高尚なテーマの記事をスタバで書いている(笑)。


(マジですから)

 わたしは昭和の男であるので、生まれたときから洋式トイレがあった世代ではない。物心つくまでは和式歴の方が長く、どこの家庭でも「洋式がフツーでしょ」となったのは、大学生くらいになってからな気がする。


(星野泰視「デラシネマ」2巻より引用。これをご存知の方、懐かしいと思いません!?)

 なので、人生五十年、男子の「小」は立ってするのが常識、座ってするなどもってのほか。男の沽券に関わる、と思って、常にスタンディングスタイルを貫いてきていた。

 ある日のこと、なんの流れでか、細君とそんな話になった。
 異性のこういう姿はどうも想像ができないらしく、細君は、男子トイレの「立ってする方」の横にはトイレットペーパーが設置してあって、ことが済んだあと、それを切ってチョンチョンと本体から滴を取る、と思いこんでいたそうだ。
 聞いていたわたしは大爆笑である。

「そんなことあるわけないだろ」
「じゃ、滴はどうするの?」
「振って落とすんだよ。ブルンブルンって」
「それだけ?」細君の目が薄ーく軽蔑に変わっていった。「男って、フケツ!」

 なにをか言わんや、である。日本男児たるもの、なにごとにも潔く対峙するのがその生きざま。その連れ合いたる細君が大和撫子の心を失っているとは!

「男はね、外にいると七人のコビトがいるの。しているときに後ろから斬られないよう、常に周囲に気を配り、必要最小限の時間でことを済ませなければならないの! そういう武士の血なんだよ、立ちションは!!」
「今は平成だし、外にいても七人のコビトはいません。というかコビトじゃないし、あなたは農家の出でしょ」

 いつもは情緒的な細君が、今日に限っては妙に論理的である。

「じゃあ家の洋式トイレでするときも立ってしてるの?」
「と・う・ぜ・ん!」
「振っておしまいなの?」
「あ・た・り・ま・え!」

 多くの男子がそうであるように、わたしも洋式トイレでは便座を上げて用を足していたのは前述のとおり。

「じゃあ、これからは」細君は腕を組んで、長くため息をつき、きっぱりと「座ってしなさい」
「やーだぴー。さっきも言ったろ、男には七人の――」
「家のトイレに七人も入れませんから! なにそれ、ギネスチャレンジ? それ以前に、敵も小人もいません!!」

 もっともである。

「スタンディングスタイルはなぁ、男の生きざまなんだよ。最期まで立って前のめりに死ぬという決意を表しているんだ」
「死ぬときはわたしの膝枕で死なせてあげるからやめなさい」

 魅力的な対案は男の決意を鈍らせるのである。いやしかし!

「いちいち座ってことを成して、そのあと紙で拭いて流すなんて面倒なこと、男がしていられるかー!」
「いちいち便座をあげてして、ブルンブルン振ってまた便座を下げる手間と、そう変わんないでしょうが」

 まあそれは……そうだよな。

「あのね、あなたのブルンブルンは、実はとっても不潔だっていう研究結果もあるの。狭い空気中に飛び散って、同じトイレを使う女性が膀胱炎になりやすいという説もあるんだよ」
「んなバカな」と、スマホで検索してみる。「……あ、ほんとだ」
「わたしが膀胱炎になってもいいの?」
「それは……」
「シッティングスタイルに変えるよね」
「……」
「お手」
「ワン」

 人生半分を過ぎて、家のトイレでは小でもシッティングスタイルですると宗旨変えさせられました。クゥーン……。

 しばらく、子犬のようにクンクン泣きながら、シッティングスタイルでやってみたのだが、そのうち、これはこれで良いのではないかと思えてきた。
 かつて山岡鉄舟は、弟子が「自分は神社の鳥居に毎日立小便をしている。だが一向に罰などあたらない」と自慢げに吹聴したところ、「武士を名乗る者が、立小便などという畜生のごとき真似をしていること自体が罰なのだ!」と喝破したという。

「あれだな、人間、思いこみってやつはいけないな」
「なんの話?」
「トイレだよ。シッティングスタイルに変えた話。やってみると、便座の上げ下げはしなくていいし、滴もトイレットペーパーで取るのは利にかなってる。文明人としての誇りを取り戻した気分だよ」
「わかったから」細君は冷たく「食事中にそういう話はしないでちょうだい」
「クゥン」

 今ちょっと検索してみると、男子のシッティグスタイル(※小)には、それはそれで前立腺炎や尿道炎になる可能性などのデメリットもあるらしい。
 わたしは細君の軍門に下ってしまったが、武士の沽券に関わる! という方は、ぜひともスタンディングスタイルを貫いていただきたいと思う今日このご――

「なにくだらないこと炊きつけてんの!」

 クゥ〜ン……。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記