2017年10月27日

【日記】トラブルを起こす人はひとりで十人の仕事をする

 ネットで特定の人に批判的意見が殺到する「炎上」。文化庁が、実際に「炎上」に関与しているのは、ネット人口の3パーセントだという調査結果を発表した。
 一次ソースは「ここ」である。ここに書かれている情報を精査しないと、この3パーセント≠多い少ないと一概には言えないようにも思う。

 わたしの体感、経験則では、ひとつの炎上に参加している人口が3パーセント、という数字は、誰でもネットができるこの時代、盛りすぎた数字かなぁ、と感じる

 また、文化庁は肝心なところがわかっていない。「炎上」事件は、必ずしも同じ人が騒いでいるわけではないのである。デザイナーの盗作事件を炎上させている人と、アイスケースに入ったバカッターを炎上させている人は必ずしも重ならない。
 たとえば、おそらくこれを読んでいるほとんどの人が、ある炎上事件に関する「ネットに強い弁護士」、「ちばけんま」、「尊師」といったワードを知らないで過ごしてきただろう。

 わたしの感覚だと「ひとつの炎上事件を目撃して、それを延焼させようと書き込みなどのアクションを起こす人の割合」は、目撃者の(ネット人口の、ではなく)1パーセント以下ではあるまいか。たいがいの人は「ふーん、バカだなぁ」とスルーして別の面白いところを探しに行く。

 ただし、その1パーセントが、いい仕事をしてくれるのだ。これがまた。

 というわけで、タイトル「トラブルを起こす人はひとりで十人の仕事をする」である。
 これはパソコン通信時代にある草の根ネットを主催していた方から聞いたお話。

 彼の草の根ネットの常連メンバーの中に、ひとり、情緒不安定な方がいたのだという。
 全方面にいきなりケンカを売る。と思いきや謝って今度は自粛すると言い出す。自粛していると、自分の居場所がなくなったと拗ねる。
 東京オフの話などが掲示板で上がると、どうせ自分は遠くにいるから参加できない、とふて腐れる。
 皆でゲームをつくろう、という話になると、プログラミングできない自分は蚊帳の外ですか、としらけてみせる。
 皆が気を遣っておだてると、鼻が伸びる伸びる。そして、再び、全方面にケンカを売り出す。

 わたしもニフティサーブの中に私的ネットを作っていたので、その草の根ネットの元SYSOPさんの人間関係にまつわる苦労話はよくわかった。

「そういう書き込みがあると、掲示板全体の雰囲気が悪くなるでしょう?」
「なりますよそりゃあ」その元SYSOPさんは嘆息し「かといって、除名するような真似はできないんですよ。ひとりをSYSOPの強権で除名すれば、必ず、ここのSYSOPは横暴だ、という人が出てくるものですから」
「で、どうしたんです?」
「なにか雰囲気が悪くなるたびに、掲示板ではその人と他のメンバーの間に入って、他のメンバーから見えるように仲裁、あと、被害に遭ったメンバーには直接メールしてあの人の病気が出たと思って我慢してください≠ニか伝えてましたねぇ」
「それで解決したんですか?」
「いや、しなかったですね。対症療法だけで、根治療法ではないですから。その人がなにか書き込むたびに、僕は薄氷を踏む思いで読んでましたよ」

 しまいには、その元SYSOPさん自らが、問題発言をくりかえすメンバーのところまで会いに行き、二人でオフしたという。

「実際に会ってみると、決して悪い人ではないんですよ。ただね、やっぱり話す言葉はトゲがあったり、妙な卑下があったり――面と向かって話している分には、表情があるので気にはならないんですけど、そのままネットにあげちゃうと誤解されるだろうな、ってところはありました。こう言っては何だけれど、男性的というか、俺の気持ちを察しろ、みたいな。自分の感情を言語化するのに慣れてないというか。不器用な方なんでしょうね」
「今で言うコミュ症みたいなものですか?」
「いや、それとは違いましたね。会ってお話しすると、宇宙人ではなかったし(笑)。ただ僕が思うに、社会生活はまともに過ごせていても、ネットではなぜか浮いてしまう逆コミュ症≠ネる人って一定数いると思うんですよ。そういう人が今の時代、不注意な発言で炎上を招いたり、逆に荷担しているのかなぁ、ってのは私見ですが」

 気になる彼の草の根ネットのその後だが――

「結局、草の根ネットブームも終わりになってきて、常連メンバーが減っていくのと同時に、僕自身に限界を感じて、閉網しました。数年間でしたけれど、振り返って思うのは――」

 そこで彼の口から出たのが、タイトルの言葉なのであった。

「トラブルを起こす人ってのは、ひとりで十人分の仕事をします。結局、最初から最後まで、彼に振り回された思い出ばかりです。まあ今となってはいい人生経験だったと思っていますが」

 なるほどねぇ、という感じだ。
 ネットで炎上事件を延焼させようとする人間の数が、1パーセントであろうが3パーセントであろうが、実はそんなことは大した話ではないのである。その1〜3パーセントの人間は火炎放射器を持っていて、あたりを焼け野原にするくらいそれを全開で振り回している、ということの方が問題なのだ。


(原作:武論尊/漫画:原哲夫「北斗の拳」10巻より引用。有名すぎるザコさんですが、この先、「逆にケンシロウに火炎放射器を使われ死亡」)

「炎上」は決して悪いことばかりではないが、「あなたのワンクリックで社会正義を実現」的なところはある。
 ワンクリックがツークリックになりキーボード連打になって、やがて火炎放射器をぶん回していた経験はないか、と、ネットワーカーなら誰でも一度は、自分を省みてみた方が良いのかもしれない。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記