2017年10月29日

【日記】二日酔いとキャベツの味噌汁

 パンパカパーン!
 個人的、人間の三大発明発表!!

 第一位:車輪(カート)
 第二位:遠近両用メガネ
 第三位:ダシ入り味噌

「一位になった「車輪(カート)」さん。その受賞理由は?」
「そうですねー。あれはたくさん残ったコミケの配布品を、クルマを停めた駐車場まで持って帰ったときのことです。搬出入をカートを使わず、ダンボール箱をそのまま抱えていったんですよ。搬入のときも苦労したんですが、もっと配布できると思っていたのに大量に余ってしまって、帰り道は重くて重くて、ぶっ倒れるかと思いました。次回のコミケからカートを使ったんですが、これが楽々でねぇ。いやぁ、車輪は人間の発明品の中で一番だと思いましたよ」
「それ以降、さらに重装備になっていったと聞きますが、そのお話は面白そうなので、そのうち別記事にしましょう」

「二位に選ばれたのは、遠近両用メガネさんです」
「こればっかりはね、歳とって、近くが見えないようになってみないとわからんよね。まあ、遠いところも、近いところも、そこそこ見えるっちゃ見えるが、逆に言えば、両方ともあんまりハッキリとは見えないんだけどね。でもね、遠くも近くも一本のメガネで見られるってのは、すごい発明品だよね。最近はみんな累進焦点だしね」
「近用に小玉の入った遠近両用も、またブームとか来るといいですよね」

「そして三位にすべりこまれたのは、だ、ダシ入り味噌さん!? ずいぶんと意外な方の入賞ですが……」

 というわけで、ダシ入り味噌は人間の発明のうち、三指に入るものだと勝手に思っている。
 なんとなれば、料理できない男子だったわたしが、唯一作れるのが、このダシ入り味噌で作ったキャベツの味噌汁だったからだ。

 若い頃は、夜、浴びるようにお酒を飲んだものであった。だいたい、二十歳以降に書いた作品で、お酒を飲まずに書いたものと言えば、最近作の「キリストを盗んだ男」しかないくらい。
 とにかく、飲まないと、【恐くて/傍点】書けないのである。
 ツイッターですぐに世界中へ向けてつぶやける現代で、この気持ちがわかる作家さん、今は多くはないのかな。自分が書いたものが活字になって印刷され、全国で売られるというのは、相応のプレッシャーがある仕事だったのである。酒でも飲まなきゃ続けてやれねぇ。

 ひどいときには、朝方吐くのを覚悟して、あらかじめ洗面器と湯たんぽを用意して飲んでいたこともあったくらい。若いとはいえ、体に無茶した罰がいまのていたらくである……。

 そんな夜を越えて、泥のように眠り起きてみれば、当然、二日酔いである。頭ズキズキ、吐き気でおぇっぷ。後悔しても後の祭りときたもんだ。

 こんなとき、不思議と自分は「キャベツの味噌汁」が欲しくなるのである。タマネギでもシジミでもダメ。キャベツ一択。
 キャベツをザクザクに切ってお湯で煮て、ダシ入り味噌を入れるだけで簡単に完成。これなら、インスタントラーメンと変わらない。食べ応えがあるキャベツの芯の部分が特に好きだ。
 一人で四杯くらい飲むと、体も温まり、二日酔いの症状が和らいでくる。大量の水分と塩分を摂取できるからではないだろうか。

 この、「二日酔い明けのキャベツの味噌汁」。いったい何回やっただろうか。わたしの作品は、相応の血もにじんでいるが、酒とキャベツの味噌汁もにじんでいる苦労の結果なのである。嫌な労作だな。

 プロポーズで「君の味噌汁が飲みたい」というのはカビの生えた定番台詞だが、わたしはあまり、そういうことにこだわりはなかった。


( 高橋留美子「めぞん一刻」15巻より引用。これのオチが実に良い。「響子さんは、鈍いんだ。」)

 以前も書いたように、細君はかなりの料理上手なのだが、わたし自身が「味音痴」なので、胃袋を捕まれて一緒になったという感はない。いいの。もし君がメシマズ嫁でもプロポーズしていたよ、きっと。

 年がいもなくフライパンを振りはじめた最近は、このダシ入り味噌がなくても味噌汁が作れるようになったが、やはりダシ入り味噌は手軽でいい。
 忙しい厨房の取り回しの中で、サッと汁物を用意できるというのはありがたい。
 味噌の大半が味噌汁で消費されるのだと割り切って、あらかじめダシを入れておくのは、実に発明品だと思う。

 まあ、手抜きと言えば手抜きなのだが、考えてみれば、車輪も遠近両用メガネも、人間が手抜きしたいと願ったゆえの産物なのである。

 今夜は久しぶりに、大盛りキャベツの味噌汁にしますかね。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記