2018年04月16日

【日記】悪夢

 今まで見た悪夢で最悪だったのが、「人を殺してしまった夢」であった。

 殺した相手が誰かはわからない。殺した方法もわからない。ただ、自分が人を殺してしまった、ということだけがわかっている状態。
 そんな状態で、街を歩いている。いつかは捕まるだろうという確固とした予感。不思議と、自首しようとは考えない(その時点で夢が変質し、相手は生きているかも、とか思っている)。また、警察が相手にしないだろうとも、なぜか思っている。

 とにかく、逃げるしかないという妄執にとらわれている。人混みではなく、山の中とか、離島とか、そういうところへ。

 再度書くが、不思議と「自首しよう」とは思っていない。それは「証拠がないから警察が相手にしない」と、なぜか思っているのである。ある意味、完全犯罪に近いわけだ。

 そんなこんなで、船に乗り込んでみたり、その乗車券になにか追跡装置がついているのではと疑ってみたり、疑心暗鬼にとりつかれ、全身が汗でビッショリとなっているうちに、ハッとして目が覚めた。

 起きて、「あぁ、俺は人を殺していなかった」と、心からホッとした。

 そんな夢を見たのは数十年前だ。だというのに、今でも不思議と思い出せる悪夢である。

 こんな悪夢を見るくらいであるから、現実のわたしは、殺人など犯せない小心者のようだ。
 何本もミステリを書いてきたが、今一歩、なにか踏み出せない感じをいつも持っていたのは、この、本物の殺意とでもいうものを、わたし自身が持てずにいたからかもしれない。

 最近、見る悪夢は、覚めない夢を覚めない夢を覚めない夢を覚めない夢である。打ち間違いではない。起きても起きてもまだ夢の中にいる、それを自覚していて、それでもなおかつ、夢から覚めることができない。
 ベッド周りの様子もすべて夢の中で再現されている。リモコンライトをつけるが、電灯がつかない。これはまだ夢の中だな、と思う。
 これは悪夢と、面白い夢≠フ両極端で、自分で「面白いなぁ」と思っているときは、夢の中で超能力が使えて、書棚の聖書をひょいっと空中浮遊させて取ったりできる。
 逆に悪夢だ≠ニ思っているときは、ここで書棚の聖書を超能力で取ることができたら自分は即座に発狂するだろう、とか考えている。
 同じような夢を見ているのに、自分の考えひとつで良夢≠ニ悪夢≠フ差ができるあたりが興味深い。

 最近、この悪夢≠ゥら脱出する方法を覚えた。寝ながらBGMを流すのである。クラシックのゆったりとした曲が良い。それを、寝ながらずっと流す。
 すると、覚めない夢を覚めない夢を覚めない夢を……のエンドレスを、「さっき聞いていた曲と違う」ということをきっかけにして、リアルに目覚めることができるのである。

 なんにしても、悪夢から目覚めたとき、となりに細君が眠っているのは心強い。思わず手を握って「怖い夢を見ちゃったんだ」と言う。
 わたしの人生が夢ならば、それはきっと、細君のおかげで良夢≠ノなっていると思う。
 なんて、最後にのろけて、読者の悪夢≠ノしちゃったり、ね。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記