2018年04月11日

【日記】夫婦ゲンカ

 教会の勉強会で、主任司祭にからかわれる。
「いやぁ、結城さん夫妻は仲が良くて、ケンカなんてしないでしょう?」
 ミサ後の連絡でも、教会委員長にからかわれる。
「おしどり夫妻で有名な結城さん夫妻のご尽力で――」

 いや、まあ、たしかにね、今はそれほど、ケンカはしませんよ。そうだなぁ。大きいのを年に一回以下くらい、小さいのを数ヶ月に一回以下くらい、そんなペース。

 ケンカと言っても、細君の方からふっかけてくることはまずない。だからわたしが売らなければ、まず夫婦ゲンカは起こらない。
 そう考えると、この二十六年の結婚生活で――

「わたしの人間ができた!」

 と言ってもいいのである(笑)。
 え、細君の方? うん、まあ、最初から人間ができてるんでしょう、きっと。中の人が定期的に入れ替わるしね。うん。

 今回はそんな夫婦ゲンカの中で、記憶に残る笑い話。
 あれは、わたしの免許証書き換えが原因であった。当時はまだ、免許証は「誕生日前」に手続きをしなければならず、わたしの誕生日は十二月二十八日、とても忙しい師走のスケジュールの中でやらなければいけなかったのである。
 まだ、ゴールド免許というものはなかったが、わたしは無事故無違反だったので、免許センターではなく、警察署で手続きをすることができた。ただ、証明写真を撮って持っていかなくてはならない。

 わたし「適当な証明写真ボックスで証明写真撮ってくるね」
 細君「えっ、もったいないよ。ここにある取材用ポラロイドで撮って、切り取っていっちゃいなよ」
 わたし「ポラロイドなんてダメだって。警察で怒られちゃうって」
 細君「平気だよ。平気」
 わたし「やったことあんの?」
 細君「ない」
 わたし「絶対ダメだって。使ってくれないって」
 細君「写ってれば問題ないんだから平気だって」

 結局、細君に押し切られて、半ば不満だったが、白い壁を背景にポラロイドで写真を撮って、それを指定大に切り取り、警察署へ免許の書き換えに行った。細君は事務所で仕事をしていたので、ひとりで。

 わたし「免許の書き換えにきたんですが」
 婦警「はーい。あれっ? この写真は――」
 わたし「(あっ、やっぱり)ダメ、ですか?」
 婦警が写真の裏をゴリゴリとこすると、顔の部分がどんどん剥がれていってしまう。
 婦警「ほら、これじゃダメですね」
 わたし「あーああああ……」

 事務所に帰って、細君と大ゲンカである。

 わたし「だからポラロイドなんかじゃダメだって言ったじゃないか」
 細君「やってみなきゃわからなかったんだからしょうがないでしょう!」
 わたし「やる前からわかってたから、オレはダメだって言ってたんだよ!! どうすんだよ。もう動ける日が今日しかないのに。だから最初から証明写真撮ってくれば良かったんだよ」
 細君「証明写真はもったいないって言ってるじゃん」
 わたし「時間の方がもったいないよ! もういい!! 免許センター行ってくる!」

 吐き捨てて、怒りを全身にみなぎらせて家を出た。クルマを飛ばして免許センターまで。当時の免許センターは流れ作業で撮影ではなく、個人で証明写真のボックスで写真を撮り、それを書類に貼り付ける方法だった。結局、やることは同じだったのだ。それでもう、怒り心頭である。
 怒りながらふと、足元をみる。なにか変な感じがずっとしていた。その正体がわかったとたん、自分が情けなくなってしまった。

 なんと、左右の靴が違う。違うものを履いてきてしまっていたのである。家から、クルマに乗って、免許センターにくるまで、怒りのあまり、ずっと気づかずに。

 ポケベルが鳴っている。細君からだった。たぶん、謝ってきたのは細君の方だと記憶している。

 わたしの方はと言えば、左右が違う靴という昭和最先端のファッションで通して、免許センターでその日の手続きをして安全講習を受け、新しい免許証を持って、帰ったと思う。

 今となっては笑い話。こうやってブログのネタにもできる。
 夫婦ゲンカなんて、そんなものだ。

 いや、そんなものだと思えるようになった月日があったからこそ、銀婚式を迎えるまで一緒にいられたのだろうな、とも思う。

 この夫婦ゲンカのとき、自分は謝らなかったような気がする。
 ごめんね。今となっては、自分が短気だった。いい勉強になったと笑い飛ばせば良かったね。
 でも、左右違う靴で半日通すという恥ずかしい思いをしたので、そのあたりで当時のわたしを許してやってくださいな、細君。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記