2018年06月03日

【回想録】ポストペットの思い出

「ポストペット」と聞いて「懐かしいなぁ」と思われたあなたは、実は自分が思っているほどネット歴が長くない。
「ポストペット」が発売されたのは1997年である。たかが21年前だ。30歳のあなたが、当時「ポストペット」を使っていたら「懐かしいなぁ」だろうが、人生半分を過ぎたわたしにとってみると「ポストペット」は、Becky!よりあとに登場してきた新興MUAという印象だったのである。

 と書いてから、Becky!の歴史を調べてみると、最初のリリースが1996年となっているので、Becky!も十分、新興MUAではあったか。上記の印象論は訂正しなければならないかも。
 わたしの愛用MUAは、2018年の今でもBecky!だが、Becky!の前は、インターネットカメレオン付属の、名も覚えていないMUAであった。

 とはいえ、新興MUAという印象が強かったのは、やはりメールに「遊び要素」が入っていたからである。正直「莫迦なことをやりやがって。妙なことを流行らさないでほしい」という気持ちが強かった。メールは平文で流し、添付ファイルはuuencodeしたものをくっつけて送る、というのが、当時の男らしいインターネットユーザーの常識であった。

 しかし、まあ機会があって使い始めてみると、これがけっこう使いやすいのである。ペットがメールを運ぶ、という遊び要素を除外しても、簡単なMUAとして優れていた。
 Becky!のようにいろいろな設定をする必要もない。文章を書くエディタも、アドレス帳も必要最小限である。一度、設定してしまえば、直感で使えてしまう。
 これは、初心者にはいいな、と、最初の印象を改めた。遊び要素もメールを恐る恐るやっている初心者には向いている。

 というわけで、まず姉が始め、わたしが遊び相手として始め、そして、パソコンを始めた父のPCにもインストールした。
 老齢の父が、PCでメールを送受できるようになったのは、ポストペットのおかげだと今でも思う。

 やがてポストペットはブームになり、わたしはコミケで「ポスペ」関係のゲームやグッズを作って、島の内側の人になったのであった(それまでも、細君のサークルの売り子で島の内側にいたことはあったが)。

 ポストペットは、BolandのDelphiかC++Builderで作られていた。これは確かである。なにより挙動がデルくさ≠ゥったし(こういうのは、プログラマは匂いでわかる)、リソースエディタでデータをブッコ抜くことができた。

 ペットのキャラクターを使って、インベーダーゲームやパックマンを模したゲームを作ったり、スクリーンセーバを作ったりして、当時のコミケではよく売れた。かなり良いお小遣いになり、売りあげはもちろん確定申告にも雑所得として算入して、それなりに税金も納めたと記憶している。


(ポスペキャラのインベーダーゲーム「ぽすぺーだー」)


(これは「ペット全員集合セーバ」)


(ペットがデスクトップを歩くマスコットソフト)

 もちろん、ポストペットを発売しているso-netの著作権を侵害するようなことは一切していなかった。念のため。キャラを使ったこういう二次創作は許可されていたはずである。

 他にも売りはしなかったが、メールを送りにいったペットをすぐに呼び戻せる「ペット召喚」――



 同時に何匹もペットを飼える(ポストペットは同時起動ができなかった)「Windows版PostPet2001を同時起動可能に」――



 などのソフトを作って、自分のサイトに置いたものだった。

 ポストペットはその後、ユーザーニーズを外した重い3D化などをして、人気は下がっていった。一人、また一人とポストペット相手は減っていき、わたしもまた、Becky!に戻った(というか、ポスペ相手の人にしかポスペを使わなかったわけだが)。

 ただ、とても簡単なMUAとしては、やはり依然として「お勧め」のソフトだよな、とは思っていた。

 そのポスペに転機が訪れる。ある日、父から「メールが送られないんだけど……」と相談があり、調べてみると、その日から、プロバイダがメール送信時に、PoP Before SMTPの他に、SMTP認証を入れていやがったのだ。父が使っているポスペは古すぎて、SMTP認証に対応していない。最新Verのポスペは、回りに使っている人もいないのでお勧めできなかった。

 仕方なく、本当に仕方なく、父のPCにもBecky!をインストールしてシェアフィを支払い、Becky!の使い方を覚えてもらった。設定はもちろんわたしがやったが、最初からBecky!の使い方を覚えてもらうのは、けっこう大変だった。
 こんなことなら、PCを始めた頃から、Becky!一本で行ってもらえば良かった、と嘆いても、あとの祭りである。

 そんなこんなで、わたしとポストペットをつないでいた最後の縁は切れ、わたしの脳内でも「回想録」カテゴリに入れられてしまったのである。

 24時間、LINEで即座に反応が帰ってくる時代の子には理解できないかもしれないが、まだテレホーダイが精いっぱいの時代、ペットがメールを運んで行き帰ってくる、相手のペットが尋ねてくる、というのはわくわく感があったなぁ、と、今なら思う。

 しかしやっぱり、メールはあくまで平文で、htmlメールなんぞもってのほか、添付ファイルはuuencodeで――という男らしさを、今でも貫いている自分なのである。
posted by 結城恭介 at 08:00| 回想録