2018年06月30日

【日記】sub60キューブ勝負の巻・その1

 ある日、細君と街中を歩いていると、細君の肩が、サングラスに白スーツ、オールバックの、あまりお近づきになりたくない男性に当たってしまった。
「おうおうおう。痛ェじゃねぇか。骨折してたらどうしてくれるんだよ」
「はぁー? その程度で骨折してるわけないでしょ」
「じゃあ、病院で看てもらう代金を払ってもらわねぇとなぁ」
「莫迦言ってンじゃないよ。人間相手の当たり屋なんて、性根がみみっちいねぇ」
「こいつは聞き捨てならねぇな、ん?」男が目を留めたのは、わたしがカバンにつけていた、小さなルービックキューブのキーホルダーである。「なんだこいつ、ルービックキューブやるのかよ?」
 わたしはキョドって「い、いえ、あの、あの、すみ、すみません、許してくださ……」
「面白ェじゃねぇか。オレもキューブにはちょっと自信があるんだ。てめぇ、どのくらいのリキなんだ?」
「え、えっと、えと、サブ135ってところで……」
 男は目を丸くし、そして大笑い。「サブ135って、三桁の数字なんて初めて聞いたぜ」
 とたん、細君は唾を飛ばして「いいじゃないのさ、この人が好きでやってんだから、あんたには関係ないでしょう」
「いいや、もうそういうわけにはいかねぇな。こっちにもメンツってものがあらあな。よし、こうなったら勝負だ。一年後の今日、こいつがサブ60を切ってたら、この件は許してやるよ」
 細君は大声で「出来らぁっ!」
「いま、なんていった?」
「よしてナオコさん」
「いいんだよ恭介。一年後にあんたはサブ60切れるっていったんだよ!!」
「あの、あの、わたしの意志は……?」
 男と細君は声を合わせて「おまえには関係ないんだよ」
「いや、あの、すごく関係あると思うんですけど……」
「こりゃあおもしろい姉御だぜ」男はわたしのことは無視し、ニヤリと不敵に笑った。「いいか、もしこいつが一年後、サブ60切ってなかったら、こいつの睾丸を摘出して女性ホルモンを大量注入の上、豊胸手術をして、オレの兄貴がやってる男の娘パブ≠ノ放り込んでやる。それが条件だ」
「え!! 一年後、サブ60切ってなかったら男の娘パブ≠ノ!?」
「まあ、そんなマネをしようなんてバカな考えはよすんだな。ハハハハ」
「……出来らぁっ!」
「いま、なんていった?」

(以下ループ……を抜け出して)

「わかった。受けて立とうじゃないの」
「いやあの、わたしの意志は……?」
 男と細君は声を合わせて「そんなもん、関係ないんだよ」
 いや、すごく関係あると思うんですけど……。

 というわけで、わたしはあと一年の間に、ルービックキューブでサブ60――六面完成を60秒以内――にできるようにならないと、睾丸摘出の上に女性ホルモンを大量注入され豊胸手術されて、男の娘パブ≠ヨ放り込まれるという運命を背負わされたのだった――。


「という『近代麻雀』+『スーパーくいしん坊』みたいな脳内設定でモチベーションを高めて、キューブをやってるんだー」
「……莫迦?」

 と、細君にはあきれられてしまった。
 キューブも「GUN 365 Air SM」という、大会入賞者が多くつかっているいいものを購入。これは確かにすごい。最高のキューブを手にした以上、いいわけは利かない。もう後戻りはできない。

「サブ」という言葉がでてきたが、これは特別な個性をお持ちの方が読む男性誌の名称ではなく「sub」と書き、sub60だと60秒以下で六面完成できる、という意味になる。

 今のわたしは、上のフィクションで書いたとおり、sub135が精いっぱいである。2分15秒だ。毎日続けて練習しているが、もう一週間ばかり、この数字でピタリと止まってしまった。
 つかっているのは「簡易LBL」という方法だが、それだけでも一分切れる、という書き込みもあったりして、自分のキューブの回し方が遅いのだろうな、考えてしまっているのだろうな、と反省材料はたくさんある。
 さらに、まだ解方の糸口すらわからないF2Lという方法も待っているのだから、のびしろはまだあるはず。

 さて一年後、わたしが結城恭介でいられるか、それとも源氏名をつけられ男の娘パブ≠ヨ売られているか、神のみぞ知る、である。

 とにかくがんばる。
 お店にきたら、サービスしちゃうから(そっちかよ!)。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記