2018年07月07日

【日記】便秘

 なんという赤裸々な言葉であろうか。「便秘」。

 最近はそうでもないらしいが、ちょっと前の医学の現場では、患者さんに聞かれそうな状況でしゃべるヤバげな言葉は、隠語で言うのが常であった。
 例えば「死んだ」ことは「ステる」。ドイツ語の「ステルベン」からきている。
 産科は「ギネ」。泌尿器科は「ウロ」。精神科は「プシコ」。
「便」に関しても、以前は「コート」と言ったらしいが、今はそのまま「便」と言うらしい。
 対して「尿」は「ハルン」で、今でも現役用語のようである。真ん中に射的のマークのような円が描かれた採尿用のカップは「ハルンカップ」と呼ぶ。

 なぜ「便秘」が隠語にならなかったのかは謎である。ちなみにドイツ語では「Verstopfung」。英語では「constipation」。しかし医療の現場で、「この患者さんフェアシュトなんです」とか「俺の手にかかればコンスチなんて造作もない」などいうことは絶対ないであろう。

「便秘」――改めて書いてみると、実にパワーワードである。なにしろ、便を秘めているのである。

「ハリーポッターと秘かな便」などというスピンオフ作品が出てきてもおかしくない感じである。

「わかったわ。ハリー、秘密は最初から、あなたのお腹の中にあったのよ」
「なんだって? ハーマイオニー。僕のお腹の中の秘密って」
「便よ。あなたの秘密の便が原因だったんだわ」


 読みたいような読みたくないような……。

「魔女の宅急便秘」などという話もできそうだ。

 大雨の中、おばあちゃんがつくった孫への誕生日祝いの「二十四日(にしん)パイ」を、一所懸命、空を飛んで届けるキキ。
「あの、宅配便秘です」
 出てきた女の子は荷物を受け取って「えー、なにこれ。あっ、おばあちゃんからか。中身はあれかあ」
 キキが去ろうとすると、扉の中から声が聞こえる。「わたしこれ嫌いなのよね。食べると二十四日でないんだもん」


 ガッカリするキキ。って、便秘が好きな人なんていないって。

 とまぁ、いきなり「便秘」の話で飛ばしまくるのは、わたしがなってしまったからである。
 以前の記事で、「わたしゃ便秘とは無縁だね。食べれば出る体。ひっひっひ」などとうそぶいていたら、なってしまったのである。便秘に。

 おそらく原因は、服薬しているクスリの種類を変えたこと。

 しかし、突然夜中にお腹が痛くなり、便が出なくなってしまったのにはまいった。そこで、「ピンクの悪魔」こと「ピンクの小粒」を一錠投入。
 結果――効かん!
 そこで半日待って、ピンクの小粒二錠を投入。
 これでいい感じで出るようになってきたが、まだまだ全部とは言いがたい感じ。

 そこでやめておけばよかったのに、ああ、なんといことか、「ピンクの悪魔なんて言われていても大したことないな。今夜は三錠で行こう」と三錠飲んでしまったのである……。

 わかるかたはこれでおわかりいただけると思うが「ピンクの小粒」の閾値は急に変わる。「ピンクの小粒」が「ピンクの悪魔」として牙をむいた瞬間であった。
 深夜、猛烈な腹痛におそわれる。いや、それで、出てくれればまだいいのである。それが、出なーい。言葉を選ばなければ「ふん詰まり」の状態。
 こんなにつらい腹痛は久しぶりである。湯たんぽをお腹に乗せて、ただ一晩、耐えに耐えた。
 そしてそれから五日、腹部膨満感とシクシクした痛みが続き、一向にハリーポッターが隠した秘密の例のものが出る気配がない。

 ごめんなさい、便秘、なめてました。

 もしかしたら、他の病気かもしれない、胆石かも、虫垂炎の軽いやつかも……と、戦々恐々としつついつもの病院に行って、血液検査、レントゲン、CTスキャンをやったが、異常なし。
「ひどい便秘ですね。下剤をだしておきますから」
 と、先生。まあ、ほかの病気でないだけよかった。

 自分を慰めつつ、結局、トボトボと病院を出る自分。
 そして今は、オシャレなスタバで便秘について書いている(笑) ふっふ。横のきれいなお嬢さん。隣で「便秘!」なんて書いているとは思うまいよ。


(マジですから!)

 たった三錠(いや二日で計六錠ってのがまずかったわけだが)のピンクの小粒で地獄を見てしまったわたしだが、飲み続けて慣れていくと、これが毎日一シート飲まないとまったく出なくなるという方もいるというから恐れ入る。
 あまり無理はよしたほうが……と、他人事ながら心配する次第だ。

 人間、食べ物に限らず、インプットは簡単だが、アウトプットはいろいろな意味で難しいものなのかもなぁ、と思ったり。

 記事を書いてから掲載されるまではタイムラグがあるので、これがみなさまの目に触れる頃には、また快便に戻っているとありがたい。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記