2018年08月01日

【日記】瓦がズレてるっすよ

 台風一過なのでこんな話題を。

 数年前、自宅に突然の訪問客。ニッカボッカにねじりはちまき。いかにも職人さんという感じである。

 職人さん「いま、近くの屋根直してンすけど、お宅の屋根の瓦、ズレてるっすよ」

 わたしはピーンときた。
 おそらく、読者の想像とは違うピーンである。
 天然系のピーンであった。

 というのも、わたしの自宅のすぐ近くには親戚の家があり、そこの瓦が本当にズレてしまっていて、直さなければいけないんだよ、という話を聞いていたからなのだ。
 わたしのピーンは――

 わたし「あっ、○○さんとこ(親戚)やってる業者さんですか」
 職人さん「っや、えっ、まぁ――」
 わたし「うちの瓦もズレちゃってますかぁ。○○さんとこから見えますか?」
 職人さん「あ、うーん、まぁ――」
 わたし「ちょっとわたしも見てみたいので、○○さんとこの屋根に一緒に登って見てみてもいいですか?」
 職人さん「っつ。いや、それはちょっとできないんで」
 わたし「そうですか――。まぁ、瓦については、ウチはいつもやってもらってる業者さんがいるので、そちらに一度見てもらうことにしますよ」
 職人さん「っれがいっすねー」
 わたし「○○さんとこの瓦、お願いしますね」
 職人さん「っすー」
 わたし「くれぐれもご安全にー」

 職人さんは、首をポキポキさせながら、帰って行った。

 みなさんはもうおわかりでしょう。これ、瓦直しの悪徳商法だったのである。それがたまたま、近所の親戚の○○家の瓦直しと重なったため、わたしが勝手に天然な勘違いをして、いきなり「見たい」などと言い出したものだから、焦らせてしまった、と。こういう経緯。
 最後に「ご安全にー」とまで言って送ってしまったのだから、自分のボケさに笑ってしまう。

 オレオレ詐欺などは逆なのである。いつもは電車で出かける家人が、その日に限ってクルマで出勤する。そこに折り悪く「クルマで事故って」という電話がかかってくる。かける詐欺師の方は全員に同じ事を言っているわけだが、かけられる側は「たまたま今日に限ってクルマででかけた」というアタマがあるものだから、パニクって詐欺にひっかかってしまうのである。

 実を言うと、わたしが上記の瓦詐欺に気づいたのは、夕食の時、「○○さんとこ直してる瓦屋さんがきてさー」と家人に話し、○○さんがまだ瓦を直していないということを知ってからであった。あぁ大間抜け(笑)。

 間抜け――そう、間が悪い瞬間というものがある。どうしてあんなオレオレ詐欺に引っかかっちゃうんだろう、と、多くの人は言うが、みな「間が悪い瞬間」に「たまたま」かかってきた詐欺の電話に騙されてしまうわけだ。
 間が悪いから、冷静さを保てない。憎むべきは、その「間」にたまたま割り込んだ詐欺師たちであり、冷静さを失ってお金をだまし取られてしまった被害者を責めることはできないのである。

 あれから数年、ウチの瓦はまだ大丈夫のようである(笑)。
 あのときの職人さんの、首を傾げ傾げ帰って行った後ろ姿を思い出すと、いまでもクスッとしてしまう。
posted by 結城恭介 at 08:00| 日記