2018年11月24日

【カットリク!】エデンの檻

山田恵庸「エデンの檻」1巻〜21巻(完結)

カット神父「はいどーもー。カットリク!司祭のカットです」
シスターリク「なんですか神父さま、その某Vtuberみたいなノリ。ええと、確かかもしか修道会¥椛ョのリクでーす」
カット神父「二人あわせて」
シスターリク「カットリク!」
カット神父「なんや君もノリノリやないかい」
シスターリク「だってこうでもしないと、わたしたち、読者の皆さまに忘れ去られているんじゃないかなーと」
カット神父「まあ作者にも忘れられているようなもんだったしね」
シスターリク「がーん」

シスターリク「ま、まあ気を取り直して、本題にいきましょう。山田恵庸先生の『エデンの檻』。飛行機事故で無人島に不時着した中学生たちが――」
カット神父「待ちたまえシスターリク。久々登場ということで、わたしも『エデンの檻』全巻を通して読んで勉強しておいたのだが、君が指摘しようとしているシーンは、ちょっとネタバレに触れていたりはしないかね?」
シスターリク「さすが神父さま、カンがお鋭い。というわけで――」
二人「ネタバレがお嫌な方は、この先のヨタ話で別ページへ飛んでいただきたく」

     *     *

カット神父「さて、『エデンの檻』と言えば、やはりあのシーンに触れぬわけにはいかんな」


(山田恵庸「エデンの檻」6巻より引用)

シスターリク「ああ、このシーンですね」
カット神父「そうそう、衝撃的なこのひとコマ。続く台詞が『何がクニだよ、ク』」
シスターリク「神父さま! それ以上、いけない!」
カット神父「ということはシスターリク、この言葉がなにを意味するかご存じなのかな?(ニヤニヤ)」
シスターリク「そういう神父さまこそ、童貞のくせに耳年増なんですね(クスクス)」
カット神父「なっ、なにを言うか。聖書にも童貞は尊いものとして書かれているのだぞ」

 彼らは、女に触れて身を汚したことのない者である。彼らは童貞だからである。この者たちは、小羊の行くところへは、どこへでも従って行く。(ヨハネの黙示録 14:4)


カット神父「ま、まあ、カトリック的には童貞≠ヘ性交渉をもったことのない女性にも使われる言葉ではあるからな。童貞マリアなんて使われることもあるしな」
シスターリク「というわけで、全国の童貞の皆さん、いつでも人材不足のカトリック教会は、あなたの司祭召命をお待ちしております。魔法使いになるより現実的ですよぉ!」
カット神父「なんでカットリク!信徒のわれわれがカトリックの宣伝をせにゃならんのだ。さあヨタ話は終わり。本題にいくぞ」

     *     *

シスターリク「物語は飛行機事故で無人島に不時着した修学旅行中の中学生たち、その中の主人公の仙石アキラ君を中心に進みます。ところがこの島、太古に絶滅した恐竜が跋扈する奇妙な場所だったんですね。彼らとの戦いの中で、今まで、特に取りえのない少年と思われていたアキラ君が人心をつかみリーダーとなっていく過程を描いていきます」
カット神父「お色気シーンは満載だが、ヨタ話で紹介した以上の過激なシーンがないあたり、少年冒険マンガとして実に健全だな」
シスターリク「でまあ、ぶっちゃけネタバレなんですが、物語が進むにしたがって、この絶滅動物だちは、過去、その島にいた研究員たちが、いろいろな動物のDNAを合成してつくったらしい、ということがわかってくるわけです」
カット神父「ジュラシックパーク風味ってわけだな」
シスターリク「そしてアキラたちは、ついに謎の中核である施設に侵入。そこで見たのが――」


(山田恵庸「エデンの檻」20巻より引用)


(山田恵庸「エデンの檻」20巻より引用)

カット神父「でかっ! キリスト磔刑像でかっ!」
シスターリク「お聖堂に比して巨大すぎますよねー。どうです。これだけでもうカットリク!じゃありませんか?」
カット神父「まあ、磔刑像だからプロテスタントでないことは確かだな。いいんじゃないの? 十字架がでっかくてもさ」
シスターリク「祭壇や聖柩、十字架の道行きがあるような感じもないんですけど」
カット神父「すさんだ建物の中っていう設定だからなぁ。それだけでカットリク!認定はできんな」
シスターリク「むー。じゃ、このコマはいかがです?」


(山田恵庸「エデンの檻」20巻より引用)

カット神父「ちょっと祭壇のロウソクの数が多すぎる気もするが、なにか特別な日のミサと考えればおかしくはないな。それにほら、なにより日曜にミサ≠ニ書いてある。正真正銘、カトリックじゃないかなぁ」
シスターリク「でもですね、なにか引っかかるんですよ、違和感があるというか――」


(山田恵庸「エデンの檻」21巻より引用)

シスターリク「ここはひとまず置いておいて、この島の製作を企図した財閥の会長が帰天するシーンがありまっす」


(山田恵庸「エデンの檻」21巻より引用)

カット神父「死の直前に病者の塗油でもやったかな。祈りの台詞は口語訳聖書コリント1の15章58節を引用してるね」
シスターリク「どうです? これって帰天のシーンにふさわしい聖句ですか? カットリク!でしょう?」
カット神父「どうかなぁ。故人があらかじめ、この御言葉で送ってほしい、と司祭に願っていたのなら、おかしいとは思わんよ」
シスターリク「ええい、もう、もどかしい! じゃあ。核心いっちゃいますよ!!」


(山田恵庸「エデンの檻」15巻より引用)

シスターリク「どうです。施設内にお聖堂までつくる敬虔なカトリック信者の研究員たちが、DNAを操作して新たな生命を産み出すっていうのはないでしょう!」
カット神父「ま、そりゃないだろうね。カトリックにとって、命≠ヘ神の領分、人間がどうこうできるものではない。ましてやDNA操作なんてのはもってのほかというのが教えだからね」
シスターリク「ほうら、だから『エデンの檻』に描かれている教会はカットリク!なんですって」
カット神父「だけどね、うーん、なんというかな。細部だけを見ればそうなんだけれど、ストーリーを通してみると、研究員たちもカトリック信徒だからこそ、自分たちがDNA操作をして新生物を作り出しているという罪悪感を打ち消すために、聖堂をつくりミサに与って祈っていたというバックグラウンドは納得できないものではないんだな」
シスターリク「えぇー」
カット神父「もちろん現実的には、そんな生命操作をしている施設内の聖堂でミサをあげるカトリック司祭などいないとか、そういうツッコミはあるだろうけれど。これがなんでもありのプロテスタントならもっと説得力あるんだけどね」
シスターリク「だけどそうすると――」
カット神父「そう。最初のコマの――」


(山田恵庸「エデンの檻」20巻より引用)

カット神父「このシーンにインパクトが欠けちゃうんだよねぇ」
シスターリク「プロテスタントの十字架にはキリスト磔刑像はありませんものね」
カット神父「だからこのあたりは、かなり曲解ではあるものの、まあカトリックの聖堂で、何も知らないカトリック司祭を呼んでミサを開いていた、ということにでもすれば、筋が通らないわけでもないんだな」
シスターリク「えぇー」
カット神父「というわけで、『エデンの檻』にカットリク!要素はなし。カトリック認定ということで」

     *     *

シスターリク「悔しい悔しい、いいですか神父さま。わたしたち、『彼岸島』『マリみて』『死星マリア』と、いつも負け戦のときだけ登場させられているんですよ」
カット神父「わたしも悔しいよ。『エデンの檻』は21巻を一気に通し読みしたんだけど、それだけに、謎を残したまま、最後三話で大風呂敷を一気に畳まれてしまって、読み終わったあとの取り残され感がね。オチは漂流教室かよ! みたいなね」
シスターリク「そっちの方ですか」
カット神父「まあ大人の事情がいろいろあるだろう中、大体の風呂敷は畳んで、あとの謎は読者の想像で補えるところまで持って行った山田恵庸先生のストーリーテリング手腕には敬服だね」
シスターリク「なに納得してるんですか。わたしたちの行くところ、カットリク!の負けばかりじゃないですか」
カット神父「まあいいじゃないか。絶対に諦めない心と、信じ合える仲間がいれば、どこだってそこがカットリク!なんだから」
シスターリク「なんでやねん」
カット神父「てなところで文字数も十分足りまして」
二人「ありがとうございましたー!」
posted by 結城恭介 at 08:00| 新興宗教カットリク!の研究