2019年02月23日

【映画評】翔んで埼玉

「ニャンニャンニャン」の二月二十二日は「ネコの日」、カルディでネコトートをゲットしたその足で細君と映画館へ。去年から楽しみにしていた、本日公開の「翔んで埼玉」を鑑賞したのだった。

 邦画はあまり劇場で見ないのだが、この作品はトレイラーで見たときから「もう絶対観にいく!」と決めていた。なんとなれば、わたしは――

 千葉県人!

 だからである(あれっ)。
 いやいや、埼玉は打倒東京を目指す盟友。その埼玉を極限までディスったこの映画を観にいかないという理由がない。

 というわけで、ネタバレ防止のための緩衝帯。この先、まだ映画「翔んで埼玉」を未見の方で、ネタバレ嫌いの方は、ヨタ話のうちにほかのページへ翔んでいただきたく。
 原作は皆さまご存じのとおり、魔夜峰央先生の「翔んで埼玉」だが、これは実は単巻タイトルではなく、白泉社刊で昭和61年8月初版の「やおい君の日常的でない生活」に収録された三本である(現在、宝島社から出ている「翔んで埼玉」は復刊されたもの)。
 この三本は完結しておらず、けっこう尻切れトンボな感じで終わってしまっている。これは作者の魔夜先生が「埼玉から引っ越ししてしまったので描けなくなってしまった」からだとのこと。
 映画はもちろん、一本完結である。マンガ版が広げた大風呂敷をどうやって畳むのかも興味津々というところだ。
 劇場もノリノリでいろいろなポップが立っている。






(千葉県人にはみそピーでも食わせておけ!)


(トイレにまでw)

 てなところで、ネタバレ緩衝帯終わり。

 ストーリー――というか設定。
 花の都、高層ビルが立ち並び、繁栄ときらびやかな文化を謳歌する日本の首都、東京都。それに比べ、隣接する埼玉、千葉、茨城はひどい差別を受けており、生活は数時代前のもの。通行手形がないと都内へ立ち入ることさえ禁じられている。
 特に埼玉への迫害はひどく、人々は穴居住居に毛の生えたような家に住んでおり、みじめな衣服を身にまとい、雑草を食むような日々を送っていた。
 壇ノ浦百美は、東京の名門校の生徒会長。もちろん、埼玉県人への差別意識は強く、


(魔夜峰央「やおい君の日常的でない生活」収録「翔んで埼玉」から引用)

 という名台詞を吐くほどの埼玉嫌い。
 そんな彼のところへ、麻美麗という名の美少年が転校してきたことから、話は始まる――。


 さてのっけからネタバレだが、このGACKTさん演じる麻美麗は、実は埼玉県人なのである。通行手形制度をなきものにすることを胸に秘め、将来、有力な政治家となれるこの学園に潜伏したのだ。
 しかしひょんなことからそれが二階堂ふみさん演じる百美にばれてしまうのだが、百美はそのとき、麗に恋してしまっている(BL!)。
 そして、ふたりの逃避行が始まった。

 このトンデモ話を「都市伝説」として、リアル埼玉の親子のドライブ道中にFMラジオで流し、幕あいに使うというストーリーテリング手法。よくある手だが、なかなか効果的である。このFMラジオの周波数が79.5(ナックファイブ)であることに思わず笑ってしまう。

 原作と大きく違うのは、埼玉の宿敵として、我が千葉県が悪役として登場してくること。東京に賄賂を送り、「東京ディズニーランド」「東京ドイツ村」「新東京国際空港」をつくっているなどと言われ、まさしくそうだと劇場でクスクス。

 千葉県人としては、「千葉県人に捕まると穴という穴に落花生を詰め込まれ、死ぬまで漁にかり出される」というあたりで笑ってしまった。まあ、そのとおりなんだけどね。

 全体的に、各県の描写はリアルである。群馬はきちんと秘境、未開の地、UMAの棲む場所として描かれ、千葉は海と落花生と暴走族が跋扈している。そんな中、埼玉の描写は、埼玉県人に遠慮してか、ずいぶん柔らかいものになっていると感じた(ぉぃぉぃぉぃ。
 そして話は進み、埼玉解放戦線と千葉解放戦線がぶつかりあうのだが、実は裏で手を組んでおり、東京都庁へと侵攻するのであった。
 なお、陰の悪者が、東京の小判鮫「神奈川県」というところもリアルである。

 エンディングはハッピーエンド……。いや、ちょっと待てよ、これはむしろ(他県人、地球人にとって)悪夢の始まりではないか? という感じで終わる。

 鑑賞直後に寄ったネットカフェで、マンガを読む細君を横にこれを書いているのだが、まぁまぁ楽しめたかなという感じ。
 埼玉解放軍、千葉解放軍などが立てているノボリに、細かいギャグが書いてあるのだが、それを劇場では確認できなかったのが心残りだ。
 これはむしろ、劇場での大迫力はもちろんだが、DVDなどでストップモーションにして楽しむこともできる映画なのかも。

 劇場では鑑賞記念として「通行手形」ステッカーをいただいた。



 わーい、これで埼玉と東京を行き来できるぞ――って、まず埼玉にいく用事って「交通博物館」見物くらいしかないんだけどね(笑)。

 さて、実際のところ、埼玉県人も千葉県人も、東京都民やそれ以外の地域の人が思うほど、互いのことを意識していない、というのが本当のところではないだろうか。
 ネットなどで両県の対立あおりをはやしたてているのは、本当に東京都民や神奈川県民ではないかなぁ、などと思ったりもしている。
 そのあたりの陰の面もきちんと描いたこの映画版「翔んで埼玉」、なかなか侮れない佳作でありました。
posted by 結城恭介 at 08:00| 書評・映画評