手塚治虫先生原作の実写映画版「MW(ムウ)」(といっても、アニメ版があるわけではない)。2009年7月4日公開の邦画である。
もちろん、原作は既読だが、映画版はだいぶ設定を変えている。まず――あっ、ここから小ネタバレがはいるので、ネタバレ嫌いの方は、下のヨタ話の間に別ページに飛んでいただきたく。
手塚治虫先生にはお会いしたことがある。筒井康隆先生の「筒井康隆全集発刊記念パーティ」でのこと。手塚先生は、本当に手塚先生でいらっしゃった。つまり、ベレー坊をかぶって、大きな鼻に、優しそうな目。マンガのとおりの方でいらっしゃったということ。
握手していただくと、その手は暖かく、この手から数々の名作が生まれたのだなぁ、と感慨深かった。
手塚先生が亡くなられたのは60歳。すると、あのときの手塚先生は、今のわたしより若かったのだ。なんとも、人のスケールの違いに萎縮してしまう。
と、こんなところで、ヨタ話は終わりにして――
本作「MW(ムウ)」映画版には、主人公、玉木宏さんが演じるエリート銀行員の結城美智雄と、山田孝之さんが演じる友人のカトリック神父、賀来裕太郎が登場する。
二人のバックグラウンドは映画を観ていただくとして、賀来裕太郎は神父なので、教会が何度か登場する。
こんな感じに。

あっ、この教会は! 一目でわかってしまった。
【カットリク!】新・警視庁捜査一課9係「殺意のロザリオ」
【カットリク!】真昼の悪魔
でも使われた、群馬県にあるカトリック埼玉教区の「カトリック館林教会」である。

ほらね。
ちなみに、カトリック教会の多くは、地名と「カトリック」の文字が入るが、その順番はけっこういい加減で、信徒の間でも定まっていなかったりする。
きっと館林教会には、テレビや映画のロケに協力的な雰囲気があるのだな。ウチの教会は、今の主任司祭がそういった用途には厳しいので、まずロケは入らない。

さて、この写真の情報だけで、カトリック信徒にはわかることがある。それは季節。復活の大ローソクが置きっぱにしてあるので「復活節」だ、と。
キョーカイ人ではないフツーの方は、街で「イースター」商戦が流行る頃、と考えていただければよい。
この「イースター」は移動祭日なので、復活の主日の始まりは3月22日〜4月25日の間の日曜日となっている。
つまり、初春から春の季節、ということだ。

これは告解のシーン。賀来神父は白のストラをかけている。復活節の典礼色は白なので、これは正しい。素晴らしい!

うーん、神父がロザリオを首にかけているのはどうかな?
それと、初春〜春にかけては、玉木宏さん演じる結城の服装が軽装過ぎる気がするのだ。いくら3月22〜4月25日までの間がある、とは言っても実際の復活の主日は3月末から4月頭に集中しているもの。
映画の中で、日付や季節に触れているシーンがない(わたしが注意して見ていなかったこともあり)ので、正確な日付がわからないのが痛い。

教会の庭で遊ぶ子どもたち。服装は初夏っぽい感じだ。
というわけで、小ネタなのでカットリク!ポイントはつけないが、見る人が見れば、お聖堂のロウソク一本で季節までわかってしまう、ということ。
ロケスタッフ方「このデカいロウソクがあると絵になるな」と、真冬のロケで祭壇に持ってきたりしないよう、ゆめゆめお気をつけを。
この「MW(ムウ)」映画版、二人の関係性が、原作ではあった同性愛関係ではなかったり(匂わせはある)、そのほか、いろいろ改変があって、世間の評価的には「むぅ」という感じだったようだ。
カトリックもんとしては、祈りのとき、指を組み合わせる形ではなく合掌だったり(でも親指はクロスしていなかった)、ストラの色は合っていたりで、まあよく研究はしているかな? 及第点かな、という気もしないでもない。もしかしたら、館林教会の方から指導が入ったのかもしれない。
それにしても、ドラマや映画の神父は、実にヒマなんだなぁ、という感想をいつも持っていたりする。教区司祭が、復活節に友人につきあって小島へ旅行などはできないでしょ、フツー。
小教区で聖務に実務に走り回っている司祭からみたら、それが一番「カットリク!」かもしれない。
