2024年04月13日

【書評】「それはただの先輩のチンコ」

 阿部洋一「それはただの先輩のチンコ」(全1巻)



 漫画家さんとしての阿部先生を応援するのなら、現在連載中の「羊角のマジョロミ」をご紹介するのが良いと思うし、また、そしてそちらも抜群に面白いのだが――



 やはりここは、男として*{作を紹介したい。

 ストーリー――この世界では、男のチンコは切断しても生きている。本体もチンコも。切断された男の本体の方はしばらくするとまたチンコが生えてくるので安心だ(そうか?)。
 東堂サトシ先輩を好きになった「わたし」こと坂下は、ギロチン小便器でサトシ先輩のチンコを切断して入手。



 それ以来、大事に一緒に過ごしていたが、ある日、そのチンコに異変が起こる。帰巣本能だ!
 坂下はそれを封じるため手段を講じるが……


 と、文章で書くと、ちょっとグロく感じるかもしれないが、引用したコマをごらんいただければおわかりのとおり、とてもユーモラスな雰囲気で、すぐに作品世界に取り込まれること請け合いだ。

 本作はこの世界≠舞台にした短編集で、いずれも、切断されたチンコと、それを所有せんとする女の子にまつわる逸話で構成されている。

 切り離されたチンコが、肉感的ではあるが可愛らしいのが良い。みな包茎なのも好感が持てる。そうそう、本物のチンコを見たことがない女性のみなさん、チンコは通常時、こんな感じなのですよ。



 チンコを扱っているとはいえ、前述したとおり、全編、ユーモラスでかつ、女の子は可愛らしいし、お話は面白い。


(タートルネックの二枚重ねなのでは……)

 また、自分だったらどうだろう、と、両性の立場で考えさせられるストーリーもあり、飽きることがない。



 もちろん、女性にも安心しておすすめできる作品だ。

 いくつかのエピソード集なので、読む方それぞれによってお気に入りの話は違ってくると思うが、わたしはやはり、冒頭に出てくる「それはただの先輩のチンコ」、そしてその結末となるラストの「火花」が好きだ。

 ツンドクはたくさんあれ、わたしもみなさんと同じように、好きな作品は何度も読み返すタチだが、その「読み返し」にも二種類ある。ひとつは、一度読んで、すぐ読み返すタイプ。そしてもうひとつは、長期にわたって、数年に一度、「ああ、あれがもう一度読みたいな」とふと思いだし読むタイプ。

 阿部洋一先生の描く世界は、この後者の方。最初にファンになったのは「血潜り林檎と金魚鉢男」からだが、これも数年おきに読み返している。

 本作「それはただの先輩のチンコ」も、長く読み続ける作品になることだろう。

 阿部先生の作品には、どれも不思議と「暖かい内臓感覚」があると思う。精神世界へのダイブではなく(経験したことはないが)手術中、開腹した内臓の間に手を入れて、その暖かさを感じるような。大事に、そっと、愛おしく、それでいて生々しい肉感的な質量を掌に抱くような印象だ。

 どちらかと言えば寡作な漫画家さんでいらっしゃるかもしれないが、同時に、描く作品すべてが傑作といえるのもまたすごい。
 絶対に代わりがいない漫画家であることも確かだ。
 本作、タイトルは手に取りにくいかもしれないが、電書などでぜひ女性にも読んでいただきたい。

 さて、わたしの細君はわたしのチンコを切断して持ち歩いてくれるだろうか。などと考えてしまったりw
 なんかその辺にポイと捨てて、ネコに齧られそうだなぁ。


(野良チンコw)

 拾った方は大事にしてね?
posted by 結城恭介 at 08:00| 書評・映画評