当初、この映画の記事は書く気がなかった。なにしろ、観てきたのはもう二週間以上前になる。

箸にも棒にもかからぬ出来だったからではない。その逆、とても良かったのだ。
ただ、原作を読み返したり、年度末で忙しかったり、まだ「前章」だから、という気持ちもあったりして、これは「後章」を観たときに書けばいいな、という気分になっていたのである。
ところが! 声優をつとめたあのさん、幾田りらさんの二人が歌う主題歌(エンディング曲)の「絶絶絶絶絶対聖域」が、耳について離れないのだ。もう二週間になるというのに、ずっとイヤーワーム(ずっと頭の中で演奏されている状態)になっている。
今も同曲を聞きながらこれを書いている。あのさんの声には中毒性がある! さらに幾多りらさんの声が入れば、もう!
週一の習慣になっている細君のカラオケ同伴でも、音痴にも関わらず、同曲を熱唱しまくってしまった。
夜、寝る前は「♪永久不滅も脆弱するの」。朝、起きると「♪つーか戦力外ワラ」。と、すぐに頭の中でレコードが回りだす……。
まいった。誰かなんとかしてくれ。
というわけで、一度、頭をリセットしたく、この記事を書いている次第。
ストーリー――3年前の8月31日、突如東京都に巨大な空飛ぶ円盤、通称「母艦」が襲来。そこから出撃した「侵略者」の攻撃によって多くの死者が出るが、アメリカ軍の攻撃によって母艦は渋谷区の上空で停止。母艦から出撃する侵略者の宇宙船も逐次迎撃された。
上空には母艦が浮き、時折自衛隊と侵略者との戦闘が行われることが日常となった東京で、小山門出は中川凰蘭ら親友たちと共に青春を謳歌していた。人類が終了する日が間近に迫っているとは夢にも思わずに――
(WikiPedia「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」より引用)
最初は、原作、浅野いにお先生の描くあのキャラがうまく動くのか、「竜とそばかすの姫」で声優経験のある幾田りらさんはともかく、初挑戦のあのさんの声はうまく合っているのかなどの不安もあったが、心配はすぐに払拭された。
銀幕の中の二人、門出とおんたん(凰蘭)は生き生きと動き、声もなにも違和感がない。
正直、「竜とそばかすの姫」でとてもお上手だった幾多りらさんはともかく、おんたん演じるあのさんがこれほどばっちりハマるとは予想していなかった。
もう、この二人以外、門出とおんたんを演じる声優は考えられないほどだ。
また、作中劇「イソベやん」の登場人物「デベ子」を演じていたのは、急逝が報じられたばかりのたらこさん。エンドテロップの最後には追悼文が映し出される。急いで挿入したのだろうが、こういう細かい心遣いが良い。
この話は、地球滅亡を目の前に日常生活を送る、門出とおんたんの物語。ジャンル的には「セカイ系」になるだろうか。

(浅野いにお「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」より引用、以下同じ)

この巨大な宇宙船が空に被った東京と、その下で、異常環境下にも関わらず慣れてしまい普通に暮らす人々。そして二人と友達たちを中心に、話はゆるゆると、そして丁寧に動き出す。
観る前は「前章」、「後章」と分けられるのは面倒だな、一本にまとめてくれたほうが見通しがよくていいな、と思っていたのだが、観終わり、さらに原作を1〜12巻まで通して読み通して、これはやはり、前後編に分ける必要があったな、と思いなおした。
今回の「前章」は、原作1〜4巻の途中、そして、4巻以降にあるエピソードをうまく組み込んで展開していく。謎は謎として残り、伏線も伏線として残っていくのだが、先を(原作で)知っていると、これもうまいシナリオだと感じた。

ネタバレはしないので、細かいことは書かないが、映画エンディング近くのこのシーン(原作では見開き)が、大きな銀幕で動きながら自分も落下していく錯覚とともに観られたのは、もう鳥肌ものである。
興業的にはあまり成果はかばかしくないと聞くが、それもあって、筆を執ったところもある。このままの勢いで「後章」が完成していたら、おそらく、わたしの今年のベストバイ映画になるだろう。
体調が悪かったので、今年はあまり劇場で映画を観られていないのだが、それでも「カラオケ行こ」、「ゴールデンカムイ」、「DUNE Part2」とアタリ映画ばかりを観ている。その中でも本作は秀逸の出来だ。
そして最初に書いたED曲「絶絶絶絶絶対聖域」がまたいい。このストーリーにぴったりなのだ。
ああこの記事を書いていても、イヤーワームが消えていかない(聞きながら書いているのだから当たり前だ!)。
今は「後編」が公開される5月24日が楽しみでならない。法人確定申告で超忙しい時期だと思うが、公開日に細君と見に行きたいと思っている。
ちなみに、細君は「前編」を観ていない。
できれば「後編」公開前に、「前編」を、テコ入れとしてアマプラでやってくれないかな、と願っているところだ。
いまちょっと、近くの劇場のスケジュールを眺めてみると、もう一日一本、小さな箱での上映になってしまっている。
この記事を読んで、少しでも興味を持たれた方は、ぜひとも劇場に足を運んでいただければ。
ちょっとだけ「後編」になる原作のストーリー、それもエンディングに触れておくと、わたしは富沢ひとし先生の「ミルククローゼット」の最後のような感覚を覚えた。「ミルクロ」をご存じの方にはわかっていただけると思う。
まだ原作全巻をお読みでない方は、どうかな――読まないで映画を観て、それから原作をお読みになられるのが良いかもしれない。
キイハナだが、映画のエンディングは原作とは違うということだし。

(この「絶対」がキーワードなのだな)
さて、これを書いたからと言って、「絶絶絶絶絶対聖域」イヤーワームからの自由を得たわけではないのである。
「♪あげる僕の絶対聖域を、もう怖くないよ〜」
ああ、なんとかしてくれ!